カテゴリビル管理
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いつ起きてもおかしくない地震。首都直下地震は30年以内に70%程度の確率で発生するとも言われています。まずは身の回りの命を守ることが第一ですが、ビルをお持ちのビルオーナー様にとってはご自身のビルに対してもどうしたらいいのか心配だと思います。
地震に対してどのように備えたらいいのか、ビル管理会社ならではの視点からご紹介してまいります。
地震発生時にビルに何が起きるのか?
まずは建物内の設備に関して見ていきます。
エレベーター
エレベーターは地震などの災害や事故が起こるたび設置基準の法律が厳しくなり、エレベーター自体の耐震、技術や性能も上がってきました。
地震発生時のエレベーターの働きを説明するために、地震の仕組みを少し説明すると震源地で地震発生の際、P波とS波2種類の波が同時発生します。P波のPは「Primary(最初)」の略で最初に来る波を意味します。「縦波」で伝わる速度はとても速いという特徴があり、このP波により「初期微動」の揺れが引き起こされます。対するS波とは「Secondary Wave(2番目に来る波)」の略で、「横波」であり伝わるスピードはP波よりは少し遅いという特徴があります。このS波により引き起こされる地震動が「主要動」で強い揺れをもたらします。
震源から観測地点までの距離が長いほど、P波とS波の到達時間の差が大きくなります。
ちなみに緊急地震速報もこの速度の差を利用して発せられています。
最近のエレベーターは賢く、P波を感知し大きなS波が来る前に止まろうとします。
だいたい震度4相当の時にこの機能が働きます。
また、その場ではなく最寄りの階まで動いて扉を開け音声アナウンスで避難を促します。
地震で建物や地域が停電になってもエレベーター内はバッテリー内蔵の非常照明がつくので真っ暗にはなりませんし、本体にもバッテリーがあり最寄り階まで行く仕組みは機能します。最寄りの階で降りたら階段で移動するようにしましょう。
メンテナンスの契約内容にもよりますが、止まった場合非常ボタンを押すとエレベーター会社とインターホンで繋がるということをイメージされた方が多いかもしれません。
最新のものは遠隔でエレベーターの運行状況や籠内の映像を集中センターで監視していますし、揺れがおさまるとエレベーター自体がAIで自己診断し異状なければ自己復旧するものもあります。
新しいものほど耐震の基準も厳しくエレベーター本体の機能も多く安心です。古いエレベーターもできるだけ現行法規に合わせリニューアルの工事を提案していると思います。
水槽
建物には水を貯めている様々な水槽があります。例えば飲み水を貯めている受水槽や高架水槽、消防用水槽、汚雑水槽等です。大概の水槽は水位の位置でポンプのON・OFFや警報制御をしているので地震が発生し水面が大きく揺れ正常でない水位置となると、センサーが誤作動しポンプが動いて水があふれたり警報が出たりします。また、水面の揺れる力は思いのほか大きく水槽自体が破損することもあります。
防火扉・防火シャッター
建物内には要所に火事の際火や煙が広がらないよう防火扉や防火シャッターが設置されています。本来感知器が作動した時に自動的に閉まるようにマグネットやラッチ爪で止まっていますが地震の衝撃で作動して閉まってしまうことがあります。一見避難路が塞がれてしまうように感じますが、落ち着いて見ると子扉あったり手動で動いたりしますので慌てず対応するのがよいでしょう。
近いもので自動ドアはパニックオープン・パニッククローズ(非常時開錠ボタンで開・火災時延焼しない様自動で閉)等もあります。こういったシステムがあることを知っているだけでも少しは慌てずに済むかもしれません。
配管類について
建物内の配管は建物に固定支持されていますが地面に埋まっている配管類はどうでしょうか。給水・ガスは圧力が掛かっているのでもし揺れで配管が割れると噴き出してしまい大変です。そうならないように、給水・ガス配管とも地中でも腐食せず揺れ等で割れたり避けたりしづらい素材で作られガス漏れ等がしないようになっています。
次に建物自体の構造に関して見ていきます。
耐震構造
壁や柱、梁などの建物の構造自体の強度を高め地震の揺れに耐えるように作られた構造のことです。建物は基本的にこの耐震を基準に構造計算され建築基準法でも定められています。
東日本大震災などの大規模な地震が発生すると、大振幅の長周期地震動が生じます。長周期地震動は先述したP波S波の後にくる表面波と言われています。
この長周期地震動で特に影響が大きいのが超高層ビルやタワーマンションといった高い建物です。特にビルの高層階の方が大きく長く揺れやすいという特徴をもつ周期となります。そのため高層ビルに関してはさらに免震、制震といった工法で地震への対策がされています。
免震構造
建物と地面は切り離された状態です。簡単にいうと地面にゴムとばねを置いてその上に建物が載っています。地面が揺れてもダンパーやゴムとばねで揺れを吸収し建物はあまり揺れません。電気や水のライフラインも揺れを吸収する免振の細工がされています。家具等の転倒の可能性が一番低いのもこの免震構造だと言われています。
制震構造
地震の揺れるスピードと地震が伝わって建物自体がしなって揺れるスピードには差が生まれ先端の揺れは大きくなります。制震構造は、建物自体の揺れを制御するイメージです。例えば構造体の中に可動式の重りやばねといった装置を仕込み、揺れ打ち消す動きをさせます。
地震発生時の管理会社の動き
通常の災害と異なり地震は全館同時発生です。
そのため地震が発生すると管理会社は大忙しになります。
被害の確認で設備や共用部のチェックしオーナー様へのご報告、入居者よりの問い合わせ対応、被害があればその復旧手配等々。会社としては社員の安全を確保考慮した上で業務にあたらせなければなりませんし通信交通関連にも影響が出ている可能性もあります。
株式会社アドバンス・シティ・プランニングの場合ですと、渋谷・銀座・上野・新宿の都内4箇所の支店にBM(ビルメンテナンス)部門があり工具や部品を積んだ車両・バイク・自転車を普段より活用しています。BM社員は各自にタブレットが支給され、社内共用サーバーやグループウェアで連携や共有ができています。災害時は安否確認アプリの自動通知が設定されており、できるだけ迅速に行動できる体制を整えています。
地震発生時にビルオーナー様としては何をしたらいいか?
それではビルオーナー様としてはどうしたらよいでしょうか?
建物で誰か怪我をしてないか、入居者は全員無事か、ガラス等が割れて危険な場所はないか、建物が壊れてないか、周辺の道路は大丈夫か、停電して無いか、等々心配はつきないかと思います。
まずはご自身や周囲の安全確保が一番の優先です。その頃にはテレビやインターネット等の様々なメディアから情報が発信され始めていると思います。
物件に関しては管理会社にご確認いただくのがいいと思います。
先述した通り、管理会社では緊急時の体制が用意されていることが多いです。その頃には情報を整理し行動を起こしているはずです。
地震の発生を防ぐことは出来ません。普段から地震が起きた時のことを想定し情報収集や準備をしておくことが大切です。日頃からも緊急時の連絡先や手順を確認しておくとよいでしょう。
株式会社アドバンス・シティ・プランニングはもともと設計事務所からスタートした管理会社であるため社内には設計、PM、BM、CMと様々な立場のプロが存在しそのバランス力には自信があります。さらに規模の大小や用途の違う賃貸ビルを数十年保有し運用してきた北辰不動産がグループ会社であるがゆえにビルオーナーとしての目線も兼ね備えていると言えます。
ビルに関するお悩みがご相談がありましたら、株式会社アドバンス・シティ・プランニングにお気軽にお問い合わせください。