投稿日:2021年05月24日 更新日:2024年07月26日

大規模修繕の実施時期|12年・15年・18年?適切な周期の目安とは

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分譲マンションの長期修繕計画は、12年周期で大規模修繕を行うことが一般的な目安とされています。最近では15年や18年などへ周期の見直しの提案を行う管理会社も出てきました。周期の延伸で建物の質が保てるのか、また商業ビルや一棟収益マンションの大規模修繕実施の適切な周期について考えてみたいと思います。

大規模修繕イメージ

分譲マンションの大規模修繕は12年周期が一般的

多くの分譲マンションでは、長期修繕計画で12年ごとの大規模修繕が設定されています。そもそも塩害が予想されるような海辺と、雨も日照も標準的な地域では、環境の違いによって建物の経年劣化の度合いに差が出るのは当然と言えるでしょう。
にもかかわらず12年周期の大規模修繕を前提としているマンションが多いのが現状です。実際に国土交通省が出している「長期修繕計画作成ガイドライン」の中で「7.修繕周期」の設定で調査・診断の結果等に基づいて設定となっています。しかし同ガイドライン・同コメントのP50「マンションの補修・修繕の概念図」、P80の修繕周期の例に竣工12年に各種修繕工事を集約していることと、国土交通省「マンションの改修・建替え等について」P13に■計画修繕と改修の重要性の表(下図参照)の中で大規模修繕工事を12年周期と表記していることを以って、各改修施工業者が「国土交通省が12年周期を推奨している」ように言っていると思われます。計画修繕と改修の重要性

また平成20年4月1日に改正された建築基準法第12条に基づく定期報告制度により、竣工・外壁改修後10年を経てから最初の調査の際に全面打診等による調査を行い、平成28年6月より変わった定期報告制度により、マンションの外壁については3年ごとの定期報告が義務付けられました。定期報告は定期的に専門技術を有する資格者(一級二級建築士、国土交通省が定める資格を有する者)に調査・検査を行わせ、その結果を特定行政庁へ報告する必要があります。打診調査イメージ

※打診調査とは、タイル貼りやモルタルの表面を打診棒やテストハンマーを用いて、タイルやモルタルの浮きの程度を調べる方法です。叩いた時の音の反響で異常を判断するため、知識と経験が必要になります。
この全面打診調査を行うには、建物の規模にもよりますが足場が必要になる場合が多いです。大規模修繕にも足場の組み立てと解体が必要であるならば、別々に行うよりも同時に実施した方がコスト面で無駄がないことになります。したがって概ね12年周期を目安とした大規模修繕の実施が定着しているのが現状のようです。

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大規模修繕の15年・18年周期への延伸は可能?

2021年2月、株式会社東急コミュニティーはマンション大規模改修工事の周期を12年から最大18年に延長をうたった長期保証商品を発表しました。仕様・工法等の工夫により建物の外装に関わる工事の保証期間を延長し、大規模修繕の回数を削減することが可能とのことです。同様の商品は野村不動産パートナーズ株式会社にもあり、プラウドシリーズで採用されています。
いずれも大規模修繕の回数を減らすことにより、建物全体のライフサイクルコストを抑える効果があるとしています。
これらの大手2社に限らず、大規模修繕の周期を12年より長くしたいというニーズに応える提案を行う業者も増えてきているようです。
立地や使用状況によりそれぞれ建物の劣化の度合いは異なります。大規模修繕工事の周期を延長が可能だとしても、その間何もしないで放置してしまっては却って劣化の速度を早めてしまう結果となりかねません。足場の組み立てを必要としない軽微な補修はこまめに行うと良いでしょう。逆に足場が必要になる高所作業で行う屋上防水※(足場不用の場合もあります)や外壁補修などに使用する建材や工法を、耐久性の高い仕様にすることで大規模修繕の周期を伸ばし、費用対効果を高められる可能性も考慮することができます。耐久性の高い仕様=高価格となり足場架設を行うなら、外装の足場架設範囲に重点的に全て修繕を行い、足場が不用な修繕工事は分散して修繕計画を立てることも必要になります。
※大規模修繕工事で費用が不足する場合、漏水事故がない物件では修繕積立金を調整し、屋上防水改修を3〜4年延期して行う場合があります。

商業ビルや賃貸マンションなどの収益ビルの大規模修繕

修繕委員会などが設置されて大規模修繕を実施する分譲マンションと異なり、収益ビルの大規模修繕はオーナーの判断により行います。また分譲マンションのようにガイドラインによる周期の具体的な年数などもありません(※定期報告制度により、建物の規模によって1年ごとか3年ごとの定期報告は必要となり、外壁の全面調査も必要となることは分譲マンションと変わりありません)。
とはいえ建物が劣化しないということではありませんので、適切な補修や修繕を行うことで資産価値を保っていく必要があるでしょう。また、新技術を導入するリノベーションを行い、資産価値を上げる必要もあります。
店舗やオフィスなどの商業ビルや賃貸マンションは、入居者が入らないと賃料収入になりません。建物の状態を適切に保つこと及び、新技術を取り込み建物のリノベーションを行うことはリーシングを行う上でも重要な要素となります。さらに建物の所有者には管理責任が法的にもありますので、例えば商業ビルで漏水などの事故があった場合、店舗への賠償責任が発生する可能性もあります。安全性の確保はビルオーナーの義務ですので、不具合なことについては特にしっかりと対応する必要があるでしょう。
商業ビルや賃貸マンションの場合、新しい技術を導入するリノベーションにより建物の付加価値を上げることで収益を上げることも必要になります。
収益ビルの大規模修繕はどのような周期で行うと良いのでしょうか。日常のメンテナンスの状況により異なってきますので、一概に○年ごとが良いと言えないのが実情です。ただし建物や設備は確実に経年劣化していきますので、建材の平均的な寿命などを参考にして大まかな目安とするのが良いかもしれません。

 

例えば屋上防水の場合

  • アスファルト防水:15〜25年
  • シート防水:10〜15年
  • ウレタン防水:10〜12年


仕様によって耐用年数(法定耐用年数ではなく実際の寿命の意味で)は異なってきますし、当然部材の種類によってコストにも大きな開きが出てきます。外壁塗装や屋上防水、エレベーターや給排水管の交換といった様々な箇所の修繕や改修を大まかにどのようなタイミングで、どのくらいの費用をかけて実施するかをあらかじめ長期修繕計画として立てておくことが重要となります。長期修繕計画をもとに、実際の建物調査により具体的な計画立案を行い、5年程度ごとの見直しを行うことを推奨いたします。不具合が出る都度に場当たり的な修繕を行うより、結果的に無駄なく建物の資産価値を維持・向上することができることでしょう。長期修繕計画を立て、修繕に必要な資金の目安を作り、修繕積立金の額を想定することで利益の確認もできることになります。

まとめ

大規模修繕を計画的に行うことは非常に大事ですが、「12年周期に必ず実施する」という前提ありきではなく、まずは建物診断で所有されているビルの現状を把握することから始めてみると良いでしょう。建物診断は改修履歴や図面などの資料と、建物の劣化の詳細な調査によって報告書を作成していきます。修繕箇所の優先順位や長期修繕計画の立案などは、不動産を運用していく上で必要な大まかな費用を前もって把握するのに役立ちます。建物の資産価値を維持・向上していくのに必要な大規模修繕及びリノベーション工事ですが、周期やその内容を適切かつ効果的なものにするためにも建物診断を利用してはいかがでしょうか。

株式会社アドバンス・シティ・プランニング

株式会社アドバンス・シティ・プランニングはもともと設計事務所からスタートした管理acp-230526会社であるため社内には設計、PMBMCMと様々な立場のプロが存在しそのバランス力には自信があります。さらに規模の大小や用途の違う賃貸ビルを数十年保有し運用してきた北辰不動産がグループ会社であるがゆえにビルオーナーとしての目線も兼ね備えていると言えます。

大規模修繕に迷ったら、株式会社アドバンス・シティ・プランニングにお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修

森峰 恒平
(株) アドバンス・シティ・プランニング銀座支店・建築課 管理建築士・設備設計一級建築士・一級建築施工管理技士

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