よく聞く「敷金」「礼金」ですが、それぞれどういう違いがあるのでしょうか。
敷金とは家賃の滞納や突然の失踪などの際に当てる万が一のために家主に預けておくお金です。退去時に賃料の不払いがあれば、その穴埋めとして敷金から控除されますし、契約の内容によりますが、原状回復や修繕金と相殺されたりしますので部屋の状態がよい状態で退去すれば多くお金が戻ってきます。
礼金とは部屋の賃貸借の時に、賃借人は賃貸人に差しあげるお金です。 返還を原則とする敷金とは違い、家主に対する感謝の印として支払われるものですので、返還されません。 関西地方では、礼金の代わりに、敷金を一部返還しない「敷引き」として支払われています。北海道などの地方では、礼金や敷引きに該当する慣習自体がない地域もあります。
元々は戦後の住宅難時代の名残で、住む家を失った人たちに部屋を貸してくれた家主に対して、住むところを提供してくれたことへの感謝の気持ちとして支払っ ていたものだと言われています。
また高度成長期のころ、首都圏へ上京する人のために親族がみ知らぬ土地で面倒を見てもらったり何かあった時の手助けに対する御礼として家主に支払っていたお金だといわれています。この行為が浸透し、慣習化したものであると考えられています。
しかし現在は、家主に面倒を見てもらうということはほとんどなく、その意味合いが当てはまらなくなっているように思われます。実際に何度か裁判で争われていますが、裁判結果においては「違反とはいえない」という判例が出ており、議論は結論が出ないまま続いている状態です。
現状は担保となる敷金と違い、礼金は年々敬遠される傾向が強まっているようです。都内でも敷金に対して礼金を安く設定したり、礼金なしという物件も多くあります。戦後の住宅難時代とは違い、現在の日本では住宅の需給バランスは、供給過剰な状況が続いているので、今後も「礼金なし」の物件は増加していくのではないでしょうか。