2023年05月22日
東京都台東区、人気の観光地「浅草」から南に1キロほどにある蔵前エリア。
下町の伝統を継承しつつ古い建物をリノベーションした店舗が生まれるなど、新しいカルチャーの発信地にもなっていることで「東京のブルックリン」とも呼ばれる蔵前エリアについて紹介いたします。
都営浅草線蔵前駅
CONTENTS
1) 都心主要駅へ乗り換えなしで好アクセス
蔵前を中心に、浅草、両国、御徒町といった観光地が広がっています
都営浅草線蔵前駅を中心としたこのエリアは、都営大江戸線、JR総武線、つくばエクスプレス線の各駅があるため、都心の主要駅である「東京」、「上野」、「新宿」駅から15分以内でアクセスが可能です。交通の利便性は、観光のためだけではなく、住居地として考えた場合も重要な要素になります。
徒歩圏内で4駅4路線が利用可能
乗降人員の面でも、都営浅草線・大江戸線の「蔵前」駅は東日本大震災後の2012年から新型コロナの流行直前の2019年まで8年連続で前年比プラスで推移しており、新型コロナ禍が落ち着けば順調に回復していくと想定できます。
(出典:関東交通広告協議会:レポート)
年度 | 浅草線 | 大江戸線 | ||
一日平均乗降人員 | 前年比増加率 | 一日平均乗降人員 | 前年比増加率 | |
2011年(平成23年) | 30,373 | −2.8% | 27,287 | −1.6% |
2012年(平成24年) | 32,486 | 7.0% | 27,287 | 7.0% |
2013年(平成25年) | 33,867 | 4.3% | 30,586 | 4.7% |
2014年(平成26年) | 34,667 | 2.4% | 31,142 | 1.8% |
2015年(平成27年) | 34,891 | 0.6% | 32,114 | 3.1% |
2016年(平成28年) | 34,891 | 1.4% | 32,114 | 1.6% |
2017年(平成29年) | 36,154 | 2.1% | 32,114 | 2.6% |
2018年(平成30年) | 37,591 | 4.0% | 35,273 | 5.3% |
2019年(令和元年) | 37,943 | 0.9% | 35,663 | 1.1% |
2) 蔵前の歴史~江戸から続く問屋の町
隅田川にかかる蔵前橋の西側に建つ「浅草御蔵跡碑」。
御蔵とは江戸幕府が集めた年貢米や買上米を収集・保管した倉庫のことで、浅草御蔵は、大阪、京都の御蔵をあわせて三御蔵と言われ、特に重要なものでした。
江戸中期から幕末にかけて浅草御蔵の前側は「御蔵前」と呼ばれ、米問屋などが建ち並んでいたそうで、そこから現在も使われる「蔵前」という町名が生まれたのは昭和9年のこと。
現在も玩具や花火の問屋が残っており、江戸の風情を今に伝えています。
浅草御蔵跡碑
浅草御蔵絵図
三社祭で有名な浅草寺に代表されるように、歴史のある神社仏閣が多いのも台東区の特徴です。蔵前エリアには、5代将軍徳川綱吉が勧請したのが始まりとされる蔵前神社や、1350年を超える歴史を誇る古社、鳥越神社など多くの社寺が残っています。
左上から蔵前神社・回向院・鳥越神社・銀杏岡八幡神社
3) 老舗の佇まいと最先端のカルチャーが併存する個性豊かな街並み
「東京のブルックリン」とも呼ばれる蔵前エリア。
ニューヨーク市のブルックリンは、世界的な観光地や金融機関が集まるマンハッタンとは異なり、工場や倉庫が集まる製造業の街でした。戦後、製造業が衰退すると、廃業した工場や倉庫にアーティストやデザイナーなどのクリエイティブな人々が集まり、思い思いに改装して暮らすようになったそうです。
蔵前はそんなブルックリンと似た雰囲気と文化を持っていると言われています。どちらも都市の中心部に近い川沿いにある職人の町であり、工場や倉庫をリノベーションしたカフェや雑貨屋などが集まっている点も共通しています。
昔ながらの職人の街と既存の建物をリノベーションした新しい街が共存する蔵前エリア
鳥越明神通り沿いにあるおかず横丁では、全長230メートルの商店街に日用品や食品などを取り扱う店舗が並んでいます。
おかず横丁
4) 生まれ変わる街 大規模再開発情報
2023年3月31日、台東区蔵前一丁目に「蔵前JPテラス」が竣工しました。
旧蔵前国技館跡地の向かい、蔵前橋通り沿いにあった「くらまえ橋郵便局」跡地を再開発した、13階建のオフィス棟と23階建の住宅棟、物流棟からなる大型複合施設です。棟内には郵便局や高齢者住宅、保育園などもあり、屋上には庭園を設置するなど、充実した住環境を目指しています。
(出典:日本郵政株式会社プレスリリース)
蔵前JPテラス 正面はオフィス棟(JPライオンビルディング) 右奥は住宅棟
5) まとめ
複数路線が利用可能で都心からのアクセスも良好な蔵前エリア。江戸下町の風情を残しつつ、大規模な再開発や倉庫・工場のリノベーション店舗が生まれるなど、まさに複層的に街が生まれ変わる最中であると言えます。徒歩圏内に浅草や両国があるため観光地としてのポテンシャルで見られがちですが、アクセスの良さを生かした住居地としての顔も注目されています。