2019年09月11日

東京と地方都市、不動産投資はどちらで行う?

不動産投資を行う際、エリアの選定は成功を左右するとても重要な要素です。東京を中心とした都心部の不動産か地方都市の不動産、どちらが良いのでしょうか。鍵は長期的な視点と日本だけではないグローバルな目線です。

 

一棟不動産投資イメージ

 

 

 

1) 不動産投資に東京が選ばれる理由

 

 

1-1)「都心回帰」による地方からの人口流入

東京23区を中心とした首都圏で不動産投資をする大きなメリットは、今後も人口増による賃貸物件への需要が期待できることです。

企業がオフィスを構え、学校や商業施設も豊富で人口が集中している東京には、今後も地方からの流入が想定されます。東京都政策企画局の調査でも、東京23区では2030年まで人口が増え続けると予想されています。


賃貸ニーズの高い状態が続くことで、賃料の値下がりなどのリスクも低め。退去が発生したとしても、入居者を見つけるまでの空室期間が郊外よりも短く、入居者募集にかかる手間・コストを比較的抑えることができるでしょう。また、都心で特に未婚者・ひとり暮らしの高齢者などが増えていることも、1Kやワンルームタイプマンションなど、コンパクトサイズの賃貸住宅市場を活性化させる要因となっています。

 

ビルが立ち並ぶ東京エリア

 

 

1-2)「TOKYO」=東京はグローバルマーケット

懸念点としては、人気のエリアほど地方に比べて利回りが低いことです。都心の駅近立地で、新築・築浅の一棟RCマンションとなれば山手線の外側でも表面利回りが4%中盤から5%台が中心。平成初期の中古物件でも23区内の好立地であれば6%台が中心です。税金や管理費などの経費と融資の返済を考えると、インカムゲイン(賃料収入)での手残りはあまり期待できません。

また、融資に関しても厳しい状況は続いており、区分のマンションや1億円以下のアパートについては、属性次第でフルローンという声も聞こえますが、比較的長期融資が期待できる新築のRC物件でも、2億円を超えるようなマンションですと原則3割以上の自己資金を求められることから、相続対策や企業の税金対策などのニーズを持ち、一定規模の自己資金や資産を既に持っている方以外は検討自体が難しいのが実情です

 

そのまま受け取ると、都心の物件は低利回りで自己資金比率も高く、投資としてのうま味が無いと考えがちですが、海外の投資家の存在を考慮するとそう単純では無くなります。たしかに他の地域に比べて「利回りは低く、価格も高騰していてキャピタルゲイン(売却益)も出にくい」と言われている東京の物件ですが、実は、わずか数年で転売されて地方の利回りが高い物件以上に大きな売却益を出している物件も沢山あります。

 

なぜ価格が高騰していて利回りが低い物件でキャピタルゲインが狙えるのか、それは単純に言えば「東京」というブランドがグローバルだからです。「東京=TOKYOという都市がグローバルマーケットで海外の投資家からも人気があることに加え、利回りが低いと言われる東京でも、海外の人気都市と比べるとまだ高い利回りが期待できるため、アジアを中心とした海外の投資家による購入意欲は引き続き高いままです。

その点、グローバルの知名度が低い地方都市はそもそも海外投資家の検討に上がることが少ないため、主な検討客は現地に土地勘のある投資家が中心です。そのため物件の流動性も低く相場も比較的安定しており、キャピタルでは利益が出しにくい市場と言えるでしょう。

 

東京は世界から投資家が集まるグローバルマーケット

 

 

2) 実は難易度が高い地方の不動産投資

 

 

2-1)「眼力」が問われる地方物件の選定

地方の不動産投資物件の特徴は、東京に比べて同じ規模でも割安で、高い利回りが期待できる物件が多いということです。また、不動産価格が比較的安定しているため、東京に比べてキャピタルゲインが期待し辛く、利益の源泉は長期の事業としてのインカムゲインが主となります。利回りが高いため、早期に投資額を回収して利益を出すことも可能ですが、その事業を継続させるためのハードルが都心の物件より高いのも地方の投資物件の特徴です。

その理由として、地方では「エリア選定の難易度」と「安定稼働させる難易度」が東京より高いということが挙げられます。エリア選定の大原則は「満室稼動が見込める」ことですが、将来予想される地方の人口減のリスクを考えると、現在の賃貸需要だけではなく、収支バランス維持の方法と出口戦略も含めた長期的な複眼的視点が東京より多く求められます。

 

国や地方自治体による再開発事業やインバウンド需要の取り組み、近隣の学校施設や労働需要のある工場の存在など、将来にわたって満室稼動可能かどうかを見極める要素は多岐にわたります。そこでエリア選定を誤ると、稼働率を維持するために想定されるより早いペースで家賃の減額や設備による競争力を高めるためのリノベーションを実施せざるを得なくなるなど、あっという間に高利回りのメリットが失われる恐れがあります。

 

場合によっては、キャピタルロスを出して損切するという選択を取らざるを得ない可能性もあります。
そういう点では、地方での不動産投資は「ハイリスクハイリターン」で、東京以上に「眼力」が問われると言えるでしょう。

 

地方の不動産投資市場は縮小傾向

 

 

2-2)一つの事業者だけを期待した収支計画のリスク

2-1)でも触れましたが、エリアの賃貸需要を考える際、「近隣に大学のキャンパスがある」、「大企業の工場がある」などの立地条件により、長期的な安定稼働が期待できる地方郊外エリアもあります。

しかし、1事業者だけをターゲットとした収支計画は危険です。2023年に八王子の多摩から文京区へ一部学部を移転する予定の中央大学の例など、都心にキャンパスを移行するケースも増えていますし、大きな企業の工場は海外に生産拠点を移す可能性も考えられます。地方で収益物件を選ぶ際は1事業者に依存せず、複数ルートから入居者を獲得できることが物件選びに欠かせないポイントになります。

また、一棟アパート投資で良く話題になる「サブリース」は、5~10年程度の短期的には安定した賃料収入が期待できますが、一定期間後に契約解除や保証賃料の減額の可能性があるため、長期的に安定して運用するにはリスクが高いと言えます。

 

工場や学校など単一の事業者に頼るのはリスクが高い

 

 

3) まとめ

東京の不動産投資は利回りが低い反面、賃貸付けは将来にわたっても比較的容易で、海外投資家も含めた不動産投資需要の高さから物件の流動性も高く、キャピタルゲインも狙えるなどの魅力があります。ただし、東京といっても将来性の期待できるエリアや海外の投資家に人気のエリアは限られており、一定以上の資産や自己資金が必要になるなど、取り組むハードルが高いのも事実です。

 

逆に地方での不動産投資は東京に比べて比較的利回りが高く、大きな賃貸収入を得る可能性がある反面、事業として長期にわたる賃貸経営の手腕が求められます。マーケットや周辺地域のリサーチ、テナントへの対応などを業者任せにせず自分で行うなど、購入だけではなく運用まで深く関わっていける体制作りが必要であると考えます。

 

いずれにしても、中期的な転売を見越しての投資物件探しなのか、10年以上先を見越した長期的な将来性に賭けてエリアを探すのか、また数億円規模のビルを複数所有できるような資産家の方は、ポートフォリオ戦略としてエリア分散するのか、といった自分の投資ポジション、投資戦略により選択が大きく異なるのが不動産投資です。事前調査やシミュレーションを行い、柔軟な目線で選定するエリアを幅広く検討することが不動産投資の成功確率を上げるのではないでしょうか。

 

この記事を書いた人

C+One 編集部
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