Yahoo!ニュースでも「不動産価格が7割下落」というようなセンセーショナルな見出しが取り上げられていますが、一口に不動産業界と言っても、実際に住むのか投資用で購入するのか、投資用の中でもエリアや物件規模、テナント種別など多岐にわたります。その中には既に大きな影響を受けており、今後価格を下げる可能性がある物件と、まだ大きな影響はまだ受けておらず、今後の価格への影響も比較的少ないのではないかと思われる物件があります。
目次
- 1. 新型コロナウイルスの経済活動への影響
- 大きな影響を受けるインバウンド市場
- 自粛ムードが国内消費に与える影響
- 2. 不動産市場への影響
- 商業ビルは賃収下落リスクに注意
- オフィスの移転、分散化、縮小の動き
- 実需(自用)の区分マンションは新築と中古で影響に差があり
- 海外の投資用不動産市場は減速の動き
- 国内の投資用不動産については今のところ影響は軽度
- 3. まとめ
1. 新型コロナウイルスの経済活動への影響
大きな影響を受けるインバウンド市場
各国で新型コロナウイルスの感染拡大防止対策が取られており、アジアや欧米からの訪日客が激減しています。出入国在留管理庁の発表によると、2020年2月の外国人入国者数は前年より140万人以上の減少。比率でいうと約55%の減少となりました。減少数の内訳をみるとそのほとんどはアジアからの入国者で、中国に至っては前年から9割近く減少しています。
また、りそな総合研究所が2月12日付で発表した「新型肺炎がインバウンド市場に与える影響」によると、インバウンド市場に与える影響が全国で6244億円と試算しています。観光客をターゲットにした物販やホテル、旅館業はもちろん、ここ数年不動産投資家が注目していた民泊物件の影響も大きく、時間貸しやマンスリーの賃貸など、稼働率を上げる活用方法を模索しているオーナーも多いようです。
自粛ムードが国内消費へ与える影響
2. 不動産市場への影響
商業ビルは賃収下落リスクに注意
インバウンド需要の低下や外出の自粛による内需の低下の影響は、売上の低下が顕著な飲食店や物販店など中心に、テナント賃料の支払い猶予や減額の交渉という形で表面化し始めています。売り上げが下がった事業者への公的な支援が十分とは言えず、ビルオーナー側としては、退去されてしまうのであればと、そういった申し入れを受け入れるかどうか難しい選択に迫られているのが現状です。投資用物件として考えた際、商業ビルについてはこういった賃収下落リスクを考える必要があるため、先行きが不透明なこの時期は検討がしづらいでしょう。
オフィスの移転、分散化、縮小の動き
テレワークが恒常化したことで、今までのようなオフィス全社員が集まれる広いオフィスは不要ではないか、あるいは、分散したり、地方に移転したり、といった動きが出てきています。
コロナが終息したとしても、テレワーク体制が恒常化したことで、企業の意識が大きく変わり、例えば「クリエイティブオフィス」といった従来からあったオフィスのあり方を「感性価値を創造する場」へと変えていくという動きも、このテレワーク体制に伴うオフィスの有り方の見直しに際して、本格化する可能性もあります。
こうした動きがオフィスを中心とした空室率や賃料相場に影響を与える可能性があります。
実需(自用)の区分マンションは新築と中古で影響に差があり
実需の住居に関しても、上記のような経済活動の制限から「消費マインドの低下」が発生しており、購入を見送っているという話を聞きます。価格が今後下がるかもしれないという期待感から、どうしても今すぐ購入しなければいけない理由がある人以外は待ちに入っているようです。
ただ、新築分譲マンションについては建設コストがかかっておりそれほど安くできないことに加え、そもそも完成後も数年かけて全戸を売り切る販売モデルを取っているため、多くの物件では価格面への影響は少ないと考えられています。
その中でも懸念されているのが、東京オリンピックの五輪選手村を再利用するマンション「HARUMI FLAG」。1次販売分の約900戸がもう契約済みですが、追加販売についてはオリンピックの開催延期にあわせて延期が発表されました。もともと、オリンピック終了後にリノベーション工事を行い、2023年3月の引き渡しを予定していたため、オリンピックの延期の影響はある程度吸収できると考えられておりますが、今後の販売スケジュールによっては住宅ローン金利などの市況にあわせて価格などの販売条件が変わってくる可能性もあります。
逆に、中古区分マンションについては事情が異なります。個人のオーナーが住み替えなどのため現在の住居の売却を考える場合、多くの場合長くても半年以内に買い手を探そうとします。ですが、消費マインドが低下しているこの時期、希望価格で買い手を見つけるのは通常よりも困難になるでしょう。今売らなくてもよい方であれば市況がよくなるまで売却を控えることができますが、今すぐ売らなくてはいけない方は価格を下げてでも売却をしようとするでしょう。
実需で探す方はもちろん、こうした物件が出てくるの待っている投資目的の方にとっては、絶好の購入タイミングと言えます。
海外の投資用不動産市場は減速の動き
国内の投資用不動産については今のところ影響は軽度
3. まとめ
今だ収束が見えない新型コロナウイルスの流行ですが、今のところ日本国内の不動産市場に関しては影響は限定的であるようです。経済の悪化による退去リスクは店舗や事務所などの商業テナントが大きく、個人向け住居に関しては少ないからです。
一方で、商業ビルや店舗が混在するような一棟ビルについては、都心の一等地は別としても、テナント退去や空室期間の長期化、賃料の値下げといった悪化があるため、住居系ビルのように影響が少ないとは言えません。但し、現時点では銀行融資を急に返済を求められるといった事態に放っていないと思われるため、安い値段でこうした空室に困ったビルが売りに出されるということはまだ少なく、投資家も様子見している状況にあると思われます。
水面下で空室に困ってたビルオーナーが、非公開でビルを売りに出しているという物件がゼロではないですが、バブル崩壊時のように急増しているというところまでは売り物は増えていないようです。
また、海外の投資家の日本国内への投資意欲も引き続き好調で、国内でも相続対策や長期保有の資産購入を検討されている投資家も引き続き物件を探しているため、好立地の物件であれば大幅な価格の下落も起きにくいでしょう。大事なことは、賃貸需要の高いエリアで入居が見込まれる不動産を選ぶことです。
---10月7日記事追加---
つい最近も香港の投資ファンドが日本の不動産に8400億円もの投資を行う方針だという記事が流れました。(2020年9月18日付け日経新聞)
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例えば好立地の新築・築浅一棟RCマンションであれば、将来に渡って安定した稼働と賃料収入が期待できる上、当面は突然の修繕費などリスクも低いという大きなメリットがありますので、このような状況下でもお勧めできる不動産であるといえます。