近年、新型コロナウイルスの蔓延や長引くウクライナ危機など、経済と環境の両分野で世界的に様々な問題が生じています。
そんな中、世界的にも話題になりつつある「グレートリセット」という言葉。
グレートリセットとは何なのか? グレートリセットが起こる中で、私たちはどのように行動するべきか?
資産防衛の観点から解説しています。
「グレートリセット」とは米国の社会学者リチャード・フロリダ氏が2008年に発行の著書のタイトルとして作られた言葉で、「世界がより良くなるように、経済・社会・環境などに関する仕組みを見直し、刷新(リセット)しよう」という考え方を意味しています。
この言葉が改めて注目されたのは2021年に開催される予定だったダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)。日本からは岸田首相が特別講演を行うなど世界各国のリーダーが集まるこの会議のテーマとして世界経済フォーラム(WEF)が設定したことがきっかけでした。
2021年は中止になり、2022年5月に改めて開催されましたが、それくらいグレートリセットは世界的にも注目されているテーマです。
この数年、コロナウイルス(コロナ禍)への対応や働き方の変化、世界経済、各地で起こる紛争、海洋ごみや気候変動などによる環境破壊など、様々な問題が山積みです。
例えば働き方でいえば、日本ではコロナ禍以降にテレワークを取り入れる企業が増えたり、飲食店はコロナウイルスの状況によっては休業や時短営業せざるを得ないなど、それまでは考えられなかったことが起きています。
グレートリセットとは、それまでの常識が大きく崩れることを示しています。
地球温暖化に関連する異常気象などを筆頭に、世界では様々な環境問題について議論が交わされています。
これまでは資本主義という名のもとに、経済発展と引き換えに森林破壊など地球環境に負荷のかかる施策が見受けられました。
その結果、地球温暖化の進行に拍車がかかってしまった部分もあります。
これを打開するために、再生可能エネルギーの利用や再生可能エネルギーや環境保全に関する事業が促進されたり、環境、社会、ガバナンスへの取り組みが重要視されてきています。
ただ単に利益をあげる会社ではなく、限られた資源を有効に活用したり消費を抑えたりと環境問題にも取り組む会社が今後は必要とされると考えられています。
実際、再生可能エネルギーの市場も広がりを見せていたり、その分野で働く人も増えています。
環境、社会、ガバナンスに考慮した投資である「ESG投資」という言葉も出てきましたが、環境問題にも配慮できる会社がこれからの投資対象としても人気が出てきました。
グレートリセットによって、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)が進んだり、ビッグデータの活用がより進むことが予想されます。
日本でも最近は働き方において、業種にもよりますが原則テレワーク(在宅勤務)の企業も出てくるようになりました。
コロナ禍のなかでテレワークが一般化しつつあり、働き方も場所を選ばなくなるなど、新しい価値観も増えてました。
会議などもわざわざ会社に行かなくても、自宅で会議に出席したり、場所によってはシェアオフィスを借りるなど多様になっています。
また、医療現場においては「オンライン診療」もあり、患者が遠くにいても診療などを受けることができます。
このように、すでにデジタル技術は様々な分野で発展しつつあります。
グレートリセットに伴うデジタル技術の進歩によって、ビジネスから日常生活まで幅広い場面でよりデジタル技術の進歩が加速していきます。
これまでの資本主義経済や企業活動は「株主」に重きを置いた要素が強く、いかに「利益」を出し「株価」を上昇させるかが重要視されてきました。
利益を追求していく中で環境問題を無視した企業活動や、従業員や下請けが酷使される労働問題も問題になりました。
グレートリセットの考え方の一つのステークホルダー経済は、株主や消費者だけでなく従業員や下請け、環境、社会全体などあらゆる利害関係者のことを考慮した経済のことです。
ステークホルダー経済(ステークホルダー資本主義)の推進に伴い、
なお、ステークホルダー経済はSDGsと合わせて語られることも多いです。
企業に関わるあらゆる人に貢献できるような企業が、未来では求められるでしょう。
完全にグレートリセットが起こるのはまだ先の話ですが、すでにグレートリセットの兆候ともとれる出来事が海外では起こりつつあります。
例えば、中国がとっている戦略として「真珠の首飾り戦略」と呼ばれる海上交通路における戦略があります。
東南アジアや台湾、日本と海洋進出を進めていくことで、外交関係や軍事力における世界的な影響力を増すことを狙った動きです。
日本も中国との関係次第では、影響がないとも言いきれません。
またミャンマーでは、国の軍隊によるクーデターが起きています。
現在はミャンマー国内における被害ですが、これがゆくゆくは海外にも波及して最悪の場合は戦争に発展する可能性が見込まれます。
中国の真珠の首飾り戦略やミャンマーの軍によるクーデターは「マクロのリセット」ともよばれていますが、いずれも今後の世界や国内の情勢や仕組みを大きく変えることも考えられます。
逆に「ミクロのリセット」もあり、こちらは日本でもすでに兆候があります。
コロナウイルス禍以降、働き方は大きく変わりオフィスに出社して仕事をするスタイルから、「在宅ワーク」(テレワーク)が一般的になりました。
在宅ワークが流行り、オフィスへの出社が必要なくなることで働く場所や住む場所がこれまでほど問われなくなりました。
良くも悪くも「自分に合った働き方」「自分はどんなキャリアを積みたいか?」などをこれまで以上に考えるようになり、コロナ禍前と比べると大きく価値観が変わった方も多いです。
価値観が変わったという点では、副業や投資にも関心を持つ人が増えた点も含まれます。
特に投資に関連するものでは、株だけではなくFXや仮想通貨で大きく稼ぐ人も増えてきています。
世界的なグレートリセットはまだ起きていなくても、小さなグレートリセットやその予兆はすでに起きているともいえます。
日本では2012年から「アベノミクス」という
を三本の矢とする経済政策が実施されアベノミクスにより、株価や日経平均が上がりました。
この間に日銀は異次元の金融緩和を実施して国債を買うことで、徐々にですがインフレになりました。
さらに、2024年には新紙幣への移行も予定されており、紙幣を刷るという点ではこれもインフレに一役買うかもしれません。
最近ではマイナンバーカードの発行を国民に呼びかけましたが、その理由としてマイナンバーカードを作ることで国民の財産を管理する狙いもあると考えられます。
もちろん、身分証明書や保険証の代わりなど使える場面を考えれば、国民側にもメリットはあります。
マイナンバーカードを作るのは多大なコストはかかりますが、それ以上に財産を管理することで税金の取りこぼしをしないことで、確実に税収を増やすメリットもあると考えられます。
特に富裕層にとっては、今まで以上に節税などに気を付けないと多大な税金を支払わなければいけなくなる可能性が高いです。
今まで以上に税金徴収も厳しくなることが考えられますが、「富の80%は上位20%の富裕層が握っている」と言われているように世の中の大半の金融資産は富裕層が所持しています。
この点では、政府からすれば確実に富裕層から大量の税金を徴収でき、日本の国家財政も改善すると考えられます。
いずれにしても、政府も税金関連についてはいろいろと策を出してくると予想されます。
生活を守る意味でも、今まで以上に節税や資産管理の意識を高めて今まで以上にしっかりと対策をとる必要が出てきます。
インフレや円安により、日本円の価値は下がっているといわれています。
インフレや円安が今後も続く可能性は不透明ですが、仮にこのまま続くとすると保有している貨幣の資産が日本円だけというのもリスクがあるといえます。
仮に日本でハイパーインフレが起これば、日本円の価値は暴落し紙幣も紙くず同然の価値になり、個人で保有している資産の価値も何百分の1、何万分の1と下がってしまいます。
日本円の価値の暴落のリスクを回避する意味では、保有している貨幣の全部とはいわずとも半分などある程度ドルなどの外貨の購入も有効です。
仮に日本円の価値が下がったとしても、相対的にドルなどの外貨の価値が上がることも多いため、外貨も保有していればトータルで見れば損失を最小限に抑えられることもあります。
いわゆる分散投資の考え方で、投資による失敗や損害も最小限に抑えられることが多いです。
インフレや円安が続くと、特に現金の価値は下がりやすいです。
銀行預金をされている方も多いですが、利息が非常に低いため預金してるからと言って資産が大幅に増えることはなく、インフレによる値上がりなどにも対応がしづらいです。
その点、現物資産はインフレなどの社会情勢と連動して価値が変化することが多く、インフレに連動して価値が上がることもあります。
例えば貴金属の中でも金は「安定資産」ともいわれており、金融危機、戦争や災害などの社会情勢の変化に対しても価値が左右されにくい点から、リスクを避ける意味で保有されることが多いです。
また、不動産は購入価格を売却の価格が上回ることで売却益が得られるのもそうですが、加えてアパートやマンションを保有して入居者が確保できれば不労所得に近い形で家賃収入も得られます。
不動産投資を始めるにあたって多額の資金が必要になることが多いですが、長期にわたって保有していれば月々の安定した収入源になれる点も良いです。
外貨や現物資産について触れましたが、リスクを回避する点でポイントになるのが「分散投資」です。
投資の世界では「卵は一つのカゴに盛るな」という言葉があります。
仮にすべてのお金を1つの会社の株につぎ込んで、もしその株の株価が暴落してしまったら損害も大きくなります。
これが預金や株だけでなく、外貨や金属、不動産、投資信託など様々な資産を持っていると、どれか1つの価値が暴落しても全体で見ればさほど被害は大きくなりません。
逆に大きく儲けるのは少し難しいともいえますが、「リスクを避けたい」という考えの強い人にとっては分散投資は有効な投資方法です。
グレートリセット、仕組みのリセットというと世の中が大きく変わるという点からネガティブなイメージを持つかもしれませんが、必ずしも全部が全部ネガティブというわけでもありません。
むしろ環境問題への取り組みやデジタル技術の革新、単なる営利目的だけでなく社会全体に貢献するような企業活動など、これから必要になってくるものばかりです。
とはいえ、資産防衛の観点からいえば何もせずにいると、グレートリセットが起こる中で資産が減るなど悪い影響も考えられます。
社会全体も鑑みながら適切に資産防衛をしていきましょう。