2022年07月14日
不動産投資は大きく分けて『個人』で行う場合、『法人』で行う場合の2パターンがあります。
「不動産投資をするなら法人の方が良い」という声もありますが、実際のところ、不動産投資は個人でやるのと法人としてやるのとどちらが良いのでしょうか。
また、法人でやる場合のポイントやタイミングは何か。
特に法人で不動産投資をやることを考えてる方に向けて解説しました。
法人として行う不動産投資について
最近は税金の改正などにより、所得によっては法人税の税率が個人の所得税を下回ることも出てきたため、法人による不動産投資も注目されるようになってきました。
また、法人と言っても様々なタイプがありますが、最近は節税対策や個人資産の管理を目的とした『プライベートカンパニー』という形態もあります。
“プライベートカンパニーとは”
当記事における意味は、『個人資産を管理したり副業などの小規模事業を行う会社』のことをいいます。
プライベートカンパニーは不動産投資を事業内容として設立されることも多いですが、個人の場合と比べて金融機関から好条件の融資を得やすいなど、法人としてのメリットも期待できます。
このほか法人には後に触れる株式会社や合同会社などの種類もありますが、法人の設立や法人としての不動産投資には、法人ならではのポイントがあるので、事前に把握しておきましょう。
法人として行う不動産投資のメリット
一番のメリットは節税
個人と法人でそれぞれ不動産投資を行う場合の一番の違いが税金です。
個人(個人事業主)として不動産投資をする場合、不動産所得が高ければ高くなるほど税金が上がります。
特にある程度所得が高くなると、同じ所得でも法人の方が税金が安くなる場合もあるので、そのレベルになると法人で不動産投資をした方が節税になる場合もあります。
法人の方が節税になる所得のラインは課税所得にして『900万円』がラインになります。
課税所得が900万円を超えると個人事業主としての所得税より法人の法人税の方が安くなるので、所得900万円が一つの目安になります。
なお法人税の額や割合については国税庁ホームページからも確認できるので、法人設立を考えている方は一度所得と照らし合わせてチェックすることをオススメします。
参考:法人税の税率|国税庁
経費計上できる範囲が個人より広い
個人事業主でも経費計上による節税も可能です。
ですが、法人には法人ならではの経費があり、下記4点も経費として認められます。
- ・給与(家族を役員にしての報酬も可)
- ・役員報酬(「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」のいずれに該当する場合)
- ・退職金
- ・生命保険(法人は全額経費にできる。個人の場合は所得控除の対象)
これらは個人事業主では経費にできません。
個人事業主より経費に使える幅が広がるのは法人ならではのメリットです。
生命保険の金額が大きかったり、誰かを雇うことを考えている場合は経費の点から法人としてのメリットも大きくなります。
金融機関からの融資が受けやすくなる場合もある
個人と法人ではやはり法人の方が金融機関からの信用度が高いことが多いです。
もちろん法人としての実績や借り入れ状況にもよりますが、大きな問題が無ければ個人より大きな額の融資も受けやすいこともあります。
融資、信用の点で考えると個人より法人の方が有利です。
法人名義の不動産だと贈与税、相続税がかからない
個人名義の不動産の場合、本人が死亡するなどして相続したら相続税、贈与した場合は贈与税がそれぞれかかります。
これが法人名義だと話が変わり、仮に法人の代表が亡くなって新しい代表者が就いたとしても法人がその不動産を所有していることに変わりはないため、相続税や贈与税はかからないです。
法人名義の不動産投資は、贈与税や相続税の対策にもなります。
法人の方が損失を繰り越せる期間が長い
仮に損失が出た場合で出来ることを考察してみると、個人事業主の場合、青色申告をする場合で損失を繰り越せるのは最大3年です。
一方で法人は最長で10年繰り越すことができます。
これによりある年で赤字を出したとしても、そこから10年という長い期間にわたって損失を繰り越すことが可能になります。
例えばある年に損失が発生しても、翌年に利益が出ても損失を繰り越すことで翌年も非課税になったり、税金を減らすことが可能です。
もちろん、個人事業主同様に損失の繰り越しには青色申告が必須なので注意しましょう。
5年以下の保有であれば売却は法人の方がお得
個人で保有していた不動産をキャピタルゲイン(売却益)を見据えて売却する場合は、保有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得として、不動産売却によって生じた利益に課税されます。
短期譲渡所得の場合は39%、長期譲渡所得の場合は20%の課税があります。
一方で法人は、すべての所得をあわせて法人税などの税金を計算します。
法人の実効税率は会社の所在地や規模、所得などにより異なりますが最大で約30~35%ほどです。
つまり5年を超えると個人の長期譲渡所得の方が20%と個人の方が税率が低くなりますが、5年以下の短気だと短期譲渡所得の39%に比べて、法人の実効税率である30%の方がお得になります。
つまり不動産売却において、5年以内に売却をするなどでキャピタルゲイン(売却益)を狙う場合は、個人より法人の方が税金面で得になります。
法人は減価償却で利益の調整ができる
個人の減価償却は強制償却が原則のため、耐用年数に応じて決まった額を経費にしなければいけないという違いがあります。
一方で法人での減価償却は任意償却といい、経費にする額を自由に決めることができます。
もしくは減価償却しないことも可能です。
そのため赤字にしないように調整することも可能なので、金融機関からの融資を受けやすいというメリットにもつながります。
ただし減価償却は金融機関からきちんとしているかなどのチェックを受けることもあります。
減価償却による利益や経費の調整の仕方によっては、金融機関からの融資にマイナスに働く可能性もあるので、不安な方は税理士などの専門家へ相談することを検討してみましょう。
法人としての不動産投資のデメリットと注意点
会社設立に手間や費用がかかる
これから法人にする(会社を設立する)場合、実は手間や費用が意外とかかります。
まず法人にするにあたっては「株式会社」と「合同会社」の2パターンに分かれます。
特に法人を設立するにあたっての手間や費用はそれぞれ異なり、例えば株式会社の場合は主なもので大きく、下記のような費用があり、株式会社は設立に最低でも250,000円以上かかります。
- 実費(定款用の収入印紙代40,000円、定款の認証手数料50,000円、定款の謄本手数料2,000円、登録免許税)150,000円
- その他(実印作成代5,000円~、印鑑証明取得費約300円×必要枚数、登記簿謄本発行費約500円×必要枚数)
- 資本金(1円以上。ただし数十万円~数百万円以上にするのが一般的)
また合同会社の場合はトータルは株式会社より少し安くなり、下記のような費用があり、合同会社の設立には最低でも110,000円以上かかります。
- 実費(定款用の収入印紙代40,000円、登録免許税60,000円)
- その他(実印作成代5,000円~、印鑑証明取得費約300円×必要枚数、登記簿謄本発行費約500円×必要枚数)
- 資本金(1円~)
法人になることで税金が安くなることがある一方、会社設立にかなりのお金が必要になることも考慮しなければいけません。
加えて設立にあたっての手続きなどで労力もかかるので、法人・会社設立は意外と大変です。
法人を維持するコストもある
法人は設立時もそうですが、設立した後もコスト(ランニングコスト)がかかります。
- 従業員を雇う場合は社会保険への加入が義務付けられており、従業員の厚生年金や健康保険の費用の半分を法人が負担する必要がある
- 決算や確定申告に関しては税理士に依頼する必要がある
など法人ならではのコストがあります。
コストも個人事業主にはなかったものがたくさんあるので、法人を作る場合はどんなコストがかかるかやいくらのコストがかかるかなどは確認しなければいけません。
赤字になったとしても法人住民税を支払う必要がある
個人事業主の場合は所得が一定額以下だったり、赤字になった場合は住民税は非課税になります。
ただし、法人の場合は仮に赤字になったとしても法人住民税は発生しますので注意しましょう。
法人住民税は自治体などにより額は異なりますが、年間7万円前後かかります。
法人化するときの基準、タイミング
不動産投資を個人で行うにしても法人で行うにしてもメリット・デメリットはあります。
ポイントはやはり税金を中心にお金周りになります。
特に気を付けるべき点は、
- 個人の場合、今の所得だと個人としての所得税と法人としての法人税ではどちらが安くなるか
- 法人を設立する場合、いくらかかるか。また維持のコストとしてどれくらいかかるか
です。
特にコストは法人住民税や法人設立に関する費用など、個人では見られないようなコストもかかるので注意が必要です。
現在の所得やどれくらいコストをかけることができるかをじっくり計算して、法人化するかどうかを判断することになりますが、一人での判断は難しいことも多いです。
法人での不動産投資に疑問や不安な点がある方は、ぜひ専門家に相談してみましょう。