投稿日:2024年05月29日 更新日:2024年07月26日

ビルオーナー様のための修繕プロセス。価値を高める効果的な修繕の計画と実行とは。

カテゴリ修繕

  • 修繕

北辰不動産株式会社と株式会社アドバンス・シティ・プランニング(以下ACP)は北辰不動産グループとして、北辰不動産が保有するビルをACPが管理や修繕を行なっています。修繕工事においてビルオーナーの立場と工事を請け負う立場の、それぞれ北辰不動産の担当者とACPの担当者に話を伺いました。個人でビルをお持ちのオーナー様にも共通する修繕工事についての考え方をご紹介します。


修繕計画の資料

前回は商業ビルの漏水について、テナント対応や散水調査などについて伺いました。工事を進める過程で、事前の調査でわからなかったことが判明した際に、北辰不動産のような会社組織と一般のオーナー様と何か違いはありますか。

森峰(ACP・建築課/工事請負側):北辰の場合は、一度で漏水を直すのが難しいことを理解してくれています。それは長期保有ビルを管理されている中で現場にも来て直接、作業確認を行っている事と、追加工事の金額よりも事態悪化の抑制を重要視している為です。
ですから追加工事も比較的スムースに実施となりますが、慣れないオーナー様ですとなかなか追加工事を認めていただけないことがあります。
また、足場を仮設すると、(細かいところまで確認が可能になることによって、新たな不具合の箇所が見つかることがある)追加工事が必要となる事象が改めてわかることが多いです。
したがってトラブルを回避するために、あらかじめ「追加工事が発生します」と文言を入れた見積もりを出します。
結果的に追加工事が必要なければそれで良いですが、必ず含みを持たせておくことが必要です。 

―一般のオーナー様としては見積もりをもらっていて、いざ工事が進んだ後に「追加工事が発生します」と言われたら確かに「え?」ってなりますね。北辰の場合はいくつものビルを所有して、これまでの経験から追加工事が発生することは理解できるから特に抵抗なくOKしていますか。

山本(北辰不動産・アセットマネジメント部/工事発注側):漏水に関してはそうですね。放置しておくとテナントさんに迷惑をかけてしまい、結局は補償って話につながりますので。追加工事はやらなければならないという認識です。

 

―漏水以外で追加工事に難色を示すことはあるのですか。

山本:内容によってはありますね。例えば社内で予算を組んだ後に「追加で何百万円かかります」って言われると「いやいや、さすがにすぐには許可できないよ」ってなります。

―何か具体例はありますか。

山本:銀座のポールスタービルで30年くらい入っていたテナントが退去した後に、スケルトンにして整備工事をすることになりました。ざっくり300万くらいの金額を出してもらったのですが、床下から出てきた土間コンクリートをはつる必要があったり、取り払わなければいけない設備が発見されたり、追加工事で結構な金額になってしまったことがあります。

 

―最終的にどのように折り合うのですか。

山本:私の方で「これはやらなくてはならない工事である」と上司を納得させることができてはじめてGOサインが出るので、そこをどう説得するかですね。さすがにこれは金額が高すぎるなと感じる場合はACPと交渉するようにしています。

―金額が合わない場合にACPはどのように解決するのですか。

森峰:基本的に金額の乖離が大きい時は工事の項目を減らすしかありません。こちらの経費を圧縮することもありますが、それはよっぽどこちらに不備があるケースです。
30年前の内装を解体したら、天井から古い図面にも載ってないような配管が出てきたようなケースではさすがにこちらに不備があるとは言えません。
金額にゆとりを持って「工事をやったらこれくらいになります」という予算を組まないといけないのですが、状態がわからないからといって高額な見積もりを出せばいいというものでもありませんし、高額な見積もりを出された方も困ると思います。
そのあたりの調整がお互いに難しいところですね。調整の睨み合いみたいな感じでしょうか。

―一般のオーナー様に対しては、最終的には必ずやる工事だけど事前に金額の調整で悩むなんてことは発生しないですよね。

森峰:それはないですね。そこはグループ会社ならではですね。

 

―ところで漏水発生時にテナントさんに対応するのは管理会社のACPのみですか。

山本:基本的にはそうですね。被害の程度がひどい場合は北辰側からも謝罪を入れて、「こういう計画で工事していきます」とお伝えすることはあります。森峰氏(左)・山本氏(右)

―そういう事態になることはよくあるものですか。

山本:そこまでのことはほとんどないですね。

―一般のビルオーナー様がテナントさんに直接何か挨拶や交渉などを行うケースはあるのですか。

森峰:比較的小さなビルで、オーナー様がそこに住んでる場合などはありますね。我々がテナントさんに「工事をするから協力してもらいたい」とお伝えする場に一緒に立ち会っていただくケースはあります。
一方、法人のオーナー様やビルを何棟も所有してらっしゃる方などではまずありません。よほど理解を得られない場合はオーナー様に出てきてもらうこともあるかもしれませんが、基本的にはACPの方で責任を持って説明を行います。

 

―一連の改修工事(駒沢パークサイドテラスの漏水改修工事)についての資料を拝見しますと、完了報告書にかなり詳細に写真が添付されています。北辰の物件の場合、(オーナーの立場として)途中経過はどのような方法でチェックしますか。

山本:「ACP担当者に一緒に来てもらい、オーナーとして直接現地に行き、今がどういう状況でどういう進み方をしているのか説明を受けます。工事がスケジュール通りに終わるかを確認します。

―一般のオーナー様もそのように工事の途中経過を現地で確認することはありますか。

森峰:ありますね。法人のオーナー様は特にその傾向が強いです。完了後の報告だけのオーナー様ももちろんいらっしゃいますが、途中で見にいらっしゃるオーナー様は、どういうふうに工事をしているのか、どういうふうに足場がかかっているのか等気にされます。
我々は劣化の状況はどうだったのか、今現在の作業の内容等を説明して、オーナー様に確認、ご納得いただいた上で引き続き作業を進めるという流れです。

―工事途中のチェックはオーナー側、工事を請け負う側双方にとって大事ですね。

山本:オーナー側からすると、今までやったことがない工事について内容を理解していないと、次にまた同じことがあったときに要望を的確に伝えられないので、経験と知識を得るという理由が大きいです。
今後自分やACPの担当者が変わったとしてもノウハウが蓄積されていることは大切だと思います。

森峰:現場からするとオーナー様に来ていただくことは非常に重要です。例えば漏水だったら、実際に現場を見てもらって説明できるので理解が得られやすいことが挙げられます。また実際の事例を知っていただくことで、別の物件で同じような状況になった時にもすんなりわかってもらえるようになります。
あと我々がいかに細かい点まで気を使って作業に当たっているのかぜひ見てもらいたいです。私はオーナー様の信頼を得て、「任せて安心だね」「次もお願いしたい」と感じていただけるような仕事をしなければならないと思っていて、なかでもオーナー様への説明は特に重要視しています。
ですからオーナー様が現場に来ていただけることは非常にありがたいです。

 

―逆にオーナー様が現場に来ることをめんどくさがるような業者は、オーナー様への説明を尽くしているとは言えないのかもしれませんね。

森峰:そうですね。現場をきれいに掃除して迎え入れ態勢は万全という業者もありますし、いろいろな業者がありますね。

―規模によるとは思いますが、北辰の場合現場でのチェックは頻繁に行いますか。

山本:頻繁には行かないですね。直近の工事に関しては2~3回くらい行きました。

森峰:わりと多く来てもらっている方ですね。一方で法人ではないお客様だと、いらっしゃることはほとんどないです。

―一般のオーナー様でも要望があれば可能なのですよね?

森峰:もちろんです。我々としてはぜひ来ていただきたいですが、日中お仕事をお持ちの方や遠方にお住まいの方など、現実的に難しい場合もありますので、その代わりに書類で詳細な説明を行います。写真の点数が多いと感じるのも、わかりやすい資料を作るために必要だからです。現場に来ても来なくても、オーナー様にしっかり納得していただけるように努めています。

―一般のオーナー様も可能であれば現場に行って説明を受けてみるといいかもしれませんね。もちろんお任せでもしっかり作業してもらうのは大前提ですが、ビルの価値を高めていく改修工事を行うためには、内容や見積もり、工事の進行状況など十分に納得することが何より重要ですね。