消防設備点検や防火対象物点検は法律に基づいた義務ですが、点検後に是正しなければならない場合など、ビルオーナー様や所轄の消防署との対応はどのように行なっているのでしょうか。本日は現役ビル管理士の網代部長にお話を伺いました。
―消防庁のまとめでは消防設備点検の報告率は5割程度に留まっているとのことなのですが。
まず私見ですがACPが多く取り扱っているような小中規模の商業ビルでは大半がちゃんと点検を行なっていると思います。全体を見ても以前よりも報告率も上がってきているはずです。特にすべての建物をまとめた場合に半分程度となっていますが、商業ビル・住居ビルといった用途と地域によって率は異なると思います。
まず繁華街の消防署は特に厳しい傾向があります。なぜかというと繁華街だと不特定多数のお客さんが出入りするビルが多いからです。一方小規模なアパートやマンションだと報告率が低くなる傾向があると思います。というのも設置されててる消防設備が少ないのと、あとはオーナー様が個人で自主管理だと制度を知らない方やまあいいかといった認識の方も中にはおられるので。そもそもそういう住居系の建物だと、設置の義務があって点検の対象となるのは消火器と避難器具くらいしか設置してないんですよ。
―火災警報器はどうなのですか
例えばここ(会議室)についているような火災報知設備の感知器だと、設置義務があって点検・報告義務がありますが、小規模なマンションだと住宅用の警報器という扱いで報告義務は無いんです。
―別物なのですね。見た目は一緒ですよね?
見た目も少しだけ違います。大きさなんかは同じくらいですね。住宅用の警報器は2006年に設置が義務化されたんですが、点検は義務化されているわけではありません。このような戸建てやアパートでよくついている警報器は電池式が多くて、煙を感知してお部屋でピヨピヨ鳴るタイプです。管理室で大きく鳴るとか非常ベルが鳴るとかはしません。ここ(会議室)の感知器は煙を感知してフロアの非常ベルが鳴ると共に管理室でどの階で発生しているかがわかるようになっています。
―家庭用火災警報器だと報告義務はないのですか。
設置しなさいとは言われるのですが点検も報告も義務ではないし、外に階段がついている2階建てのアパートなんかだと避難はしごもなくて、結局点検報告するものって消火器だけなんですよ。本当は報告しなくてはいけなくても新しいし古くなったらホームセンターで買えばいいかねっていうオーナー様も出てきてしまうかもしれないですね。
建築の確認申請の際に消火器の設置届は出されているはずなので、消防署としてはあそこの建物には設置されているとデータベースとしてはあるのですが、その後の報告はされていないという状態になってしまっているのだと思います。ですのでトータルの実施・報告率というふうに見ると低くなってしまうのではないでしょうか。
―COCOCUBEやCOCOFLAT(北辰不動産グループのRC造一棟マンション)はどうなってます
もちろんどっちも行っています。
―売却後にオーナー様が替わっても?
そうですね。ACPが管理を行なっている契約の仕様に盛り込んでいて、その内容で継承していただきたくことがほとんどです。
―商業ビルの管理を請け負うにあたり、当然点検・報告を提案すると思いますが、それでもオーナー様の方で「やらなくてもいいよ」という意識の場合はどうしているんですか。
やはりそういうビルは困りますね。こちらとしては「やってください」と再三オーナー様に提案してそれでも「やらない」のであれば、それは「管理会社としては提案したけれどオーナー様の方でやらない判断をした」という形にせざるを得ないです。ただそういう事態を防ぐ対策で消防署の予防課に査察係というのがあって、何年かに一度立入検査が行われたりすることもあります。
―管理会社としてはオーナー様と消防署の間の板挟みになることもありますね。
まさにそうです。ただオーナー様みんなが消防法に精通しているわけではないので、管理会社と協力した方がやりやすいという消防の担当者もいます。
例えば商業ビルでスケルトンの契約だと内装をテナントさんが作ってそれに合わせて感知器や避難誘導灯を増やすので、厳密に言うと増やした分はテナントさんの所有物になります。ビル側で点検は実施しますが壊れていたり型式の失効がわかった場合、テナントさんに「直してください」と提案をします。直してくれればいいですが費用がかかるなどの理由でなかなか直してくれないことも。オーナー様と消防の板挟みだけでなく、テナントさんと消防との板挟みもあります。
―PMだけ請け負っていて、点検やビルメンテナンスなどを外注しているような管理会社だと「板挟み」になって対応してくれる立場の人が不在になってしまいそうですね。
PMだけ、もしくはBMだけの管理会社で「報告書を出して終わり」という風になるとオーナー様が消防にいろいろ指摘を受けても「どうすればいいの」という状態になってしまうこともあります。そういう意味からすると確かに総合管理だからこそ柔軟に対応できると言えますね。
―なるほど消防設備点検や防火対象物点検は点検した後にもオーナー様やテナント、消防署との細かな対応が必要になってくるのですね。
今日はありがとうございました。
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