建物には万が一火災が発生した際に被害を最小限に抑えるための様々な工夫が施されています。その一つが「防火区画(ぼうかくかく)」です。
防火区画とは一体どういったものなのか詳しくご紹介してまいります。
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防火区画は火災が発生した際に火災の拡大被害を最小限に抑えるために、建築物の区画を制限したもので建築基準法施工令第112条によって定められています。
例えば大規模な建物だと火災が発生した時に離れたフロアにいると気づかない場合があります。しかし炎や煙はあっという間に燃え広がるため逃げ遅れてしまう恐れがあり危険です。
そうしたことを防ぐために燃えにくい準耐火構造や耐火構造の壁や床、または防火戸などを使って建物を一定の区画に区切ります。これが防火区画の基本的な概念です。こうした防火区画があることで、炎や煙を一定領域内に封じ込めることができ、延焼を防いだり避難経路や避難する時間を確保することが可能となるのです。
防火区画の種類は大きく4つに分けられています。
面積区画は建築基準法施行令第112条の第1項~第4項、高層区画は第5項~8項、竪穴区画は第9項、異種用途区画は第12項~第13項において、それぞれ定められています。
それぞれについて見てまいります。
面積区画は主に水平方向の火災拡大を防ぐために一定の面積ごとに区切ったものです。面積区画は、広さや耐火建築物の構造などによってさらに対応方法が分けられています。
11階以上の高層建築物の場合には火災が発生した際に、はしご車が届かず消火活動がより困難になると予想されるため区画面積がさらに制限されます。
階段や吹き抜け、エレベーター昇降部分、メゾネット住戸など縦に空間が広がっている部分は炎や煙が広がりやすく危険です。具体的には主要構造部分が耐火構造、もしくは準耐火構造になっている地階または 3 階以上に居室のある建築物、小規模な特殊建築物が竪穴区画の対象となっています。
一つの建物内に住居やオフィス、店舗など異なる用途部分が混在しているような複合施設(複合ビル等)でそれぞれの管理者や利用者が別々の場合、火災発生条件が異なったり火災に気づきにくい可能性があるため異種用途区画として制限があります。
そんな防火区画はどうやって作るのでしょうか。また作る際の注意点を見ていきます。
防火区画は主に
などで炎を遮るように作られ、一定時間の耐火性が要求されます。
(防火設備は20分以上、特定防火設備は1時間以上の耐火性能とされています)
防火設備や特定防火設備には、人が戸を開けている時にだけ解放されそれ以外は自動的に閉鎖する「常時閉鎖型防火戸」や、感知器連動方式の「随時閉鎖型防火戸」「随時閉鎖型防火シャッター」などが含まれます。
防火区画である壁や床などに給排水管や電線ケーブル、ダクトなどの貫通部がある場合は貫通部の開口を伝って炎が通ってしまう恐れがあるため、貫通部に対し防火処理を行う「防火区画処理」が必要になってきます。
例えば給排水管の貫通部は周囲1mは不燃の材料を使ったり、電気配線の貫通箇所は消防認定の工程の処理が必要だったりします。また、換気設備のダクト等が貫通する場合にはダクト内部を熱や炎が通る可能性があり防火ダンパーというダクトを閉じる装置を設置しなくてはなりません。
面積区画・高層区画・竪穴区画と接する外壁には設計時に「スパンドレル」と言われる準耐火構造以上の壁を一定距離設けなくてはなりません。わかりやすく言うと隣の区画の開口部同士の距離をとるということです。「スパンドレル」を設けることで窓から噴き出した炎が周囲の区画への延焼を防ぐ役割があります。
防火区画として様々な制限がある一方、免除や緩和がされる場合もあります。
面積区画において、映画館・劇場・体育館・ボーリング場・工場といった大きな空間は、防火区画の規定に沿って面積を区切ってしまうと、その施設の役割を担うことが出来ません。
そのため面積区画が免除されることがあります。これは建物全体が免除されるというわけではなく、やむを得ない部分に対する区画に関してのみ免除されることになります。
他にも「冷蔵品を保管する工場」などは火災発生の恐れが少ないなどで免除される場合があります。
竪穴区画では基本的に3層以上の吹き抜けは感知器連動閉鎖式シャッターなどを設置しないといけませんが、避難階から直上階または直下階に通じる吹抜けとなっている部分のみ仕上げと下地を不燃材料で造ったものは免除されます。避難階とは1階に出る階のことで、1階から2階への吹き抜けと1階から地下1階への吹抜けは免除されるということです。
また3階以下で床面積が200㎡以内のメゾネット形式のような住宅部分での吹き抜け、階段部分などは竪穴区画が免除されます。
スプリンクラーや、水噴霧消火設備、泡噴霧消火設備などの自動で作動する消火設備を設置することで、区画ごとの面積を2倍にすることが可能です。
これは面積区画でもその他の区画でも採用される緩和となります。
防火区画については建築基準法に細かく規定が定められておりますが、その法規を読みとくのは難解です。しかしながらきちんと理解しないまま、ビルのリノベーションやリフォームを行ってしまうと法令違反になるだけでなく、万が一誤った防火区画で火災が発生するとビルのオーナー様の責任になってしまう恐れがあります。
不明な点は建築事務所やビル管理会社、防災点検業者等に問い合わせて理解を深めていくのがよいでしょう。
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