カテゴリビル管理
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未経験であったり資格がなくてもビルメンテナンス業界に就職することは可能ですが、ビルメンとしてキャリアアップしていきたいと考えた場合、経験とともに資格をもっていることはとても大切になります。
なぜならば、ビル管理は専門知識や技術が重要で、資格を有する者でないとできない業務もあるからです。
ここでは、ビル管理業界でステップアップしていく上で取得しておくとよい資格と、ビル管理士になるための方法をご紹介していきます。
目次
ビル管理と資格
ビルメン4点セット
ビルメンテナンスに従事する方が最初に取得するとよいのが「ビルメン4点セット」といわれる資格です。ビルメンテナンスを行う上で基本とされている資格であり、「第2種電気工事士」「危険物取扱者乙種4類」「ボイラー二級技士」「第3種冷凍機械責任者」を指します。
1.第2種電気工事士
一つ目が「第2種電気工事士」です。
電気工事士は、「オフィスビル、テナントビル、工場、一般住宅などの建物や設備の電気を扱う工事 (電気工事)」で必要となる資格です。 第二種電気工事士になれば、一般住宅や店舗など普段皆さんが使用する100ボルトから200ボルトの電気設備の工事に従事することができるようになります。
2.危険物取扱者乙種4類
二つ目が「危険物取扱者乙種4類」です。
消防法で指定されているガソリンや灯油類などの「危険物」を取り扱うには「危険物取扱者」である必要があります。 またそれら危険物を取り扱う化学工場、ガソリンスタンド、石油貯蔵タンクなどの施設などにも必ず危険物取扱者を置かなければなりません。 危険物取扱者には種類があり、「甲種」になると全種類の危険物を扱うことができます。 「乙種第4類」は、ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体を取り扱えることができるようになります。
3.2級ボイラー技士
三つめが「2級ボイラー技士」です。 ボイラーとは、燃料を燃やして水蒸気や温水にする熱交換器をもった熱源機器のことを指します。普段なかなか目にする機会はありませんが、実はオフィスビル、商業ビル、デパート、ホテル、マンション、工場など多くの施設で利用されています。 高温を発するボイラーが、施設内で事故を起こすと大変なため、労働安全衛生法の関係上、ボイラーを稼働するにはボイラー技士の免許が必要となります。ボイラー二級技士となれば伝熱面積の合計が25㎡未満のボイラー取扱作業主任者となることができるようになります。
4.第三種冷凍機械責任者
最後が「第三種冷凍機械責任者」です。冷凍にかかわる高圧ガスを製造する施設にて保安の業務を行う資格となります。そのうち第三種は1日の冷凍能力が100トン未満の製造施設における製造にかかわる責任者になることができます。
ビルメン 3種の神器
ビルメン4点セットを取得した人がさらなるキャリアアップを目指した時取得するのが「ビルメン上位資格」や「ビルメン三種の神器」と呼ばれる資格となります。
これは「建築物環境衛生管理技術者」「第3種電気主任技術者」「エネルギー管理士」を指します。
その中でも「建築物環境衛生管理技術者」のことを通称「ビル管理士」と呼びます。
「建築物環境衛生管理技術者」はビルメンテナンス業界においては非常に重要なため、ここではこの「建築物環境衛生管理技術者」について詳しくみていきましょう。
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)について
ビル管理士とは
「建築物環境衛生管理技術者」通称「ビル管理士」は、特定の建築物の環境衛生を維持管理することを目的とした国家資格となります。
面積3000㎡(学校の場合は8,000㎡)以上といった特定の建築物においては、建築物の維持管理が環境衛生上、適正に行われるように監督させるため、ビル管理士を選任させる義務があります。特定建築物とは、映画館、劇場、ホール、デパート、図書館、博物館、美術館、ボーリング場、商業施設、大・中規模オフィス、超高層ビル、大学、旅館、ホテルといった施設を指します。
ビル管理士は、ビルの最高責任者という位置づけとなるため、
―建築物の維持管理計画の立案
―計画に対する実行と指揮監督
―建築物の測定、検査結果の評価と問題点に対する改善案の作成
などが主な業務となり、とりまとめたものを、ビルオーナーやテナント等へ意見を申し出たりもしなければなりません。
ビル管理士のメリット
ビル管理士は、実務経験と知識が必要な上、合格率が低く誰でも取得できるような資格ではないため、取得すると資格手当がついたり、昇給や転職にも有利に働くと考えられます。
またビル管理士の資格を取得すると、空気環境測定実施者や貯水槽清掃作業監督者など他の資格講習が受講できるようになり、更なる活躍の場が広がります。
世の中からビルがなくならない限り、必要とされる資格であると言えるでしょう。
そんな「ビル管理士」になるためには、試験を受ける方法と講習を受講する方法があります。
ビル管理士になる方法 その1. 建築物環境衛生管理技術者 試験を受ける
建築物環境衛生管理技術者の受験資格
ビル管理士になる試験は誰でも受験可能ではありません。
試験実施機関である「公共財団法人 日本建築衛生管理教育センター」では以下のように受験資格が定められています。
次の用途に供される建築物の当該用途部分において環境衛生上の維持管理に関する実務に業として2年以上従事された方 (従事期間については、実務従事証明書の証明日現在で2年以上が必要です。)
要は定められた目的で使われている建物において、定められた業務内容を2年間以上行っている必要があるということです。 それぞれ説明していきます。
■建築物の用途
建物は下記の用途で利用されているものが該当します。
- ア)興行場(映画館、劇場等)、百貨店、集会場(公民館、結婚式場、市民ホール等)、図書館、博物館、美術館、 遊技場(ボーリング場等)
- イ)店舗、事務所
- ウ)学校(研修所を含む。)
- エ)旅館、ホテル
- オ)その他アからエまでの用途に類する用途
多数の者の使用、利用に供される用途であって、かつ、衛生的環境もアからエまでの用途におけるそれと類似しているとみられるものをいいます。
■環境衛生上の維持管理に関する実務
ここでいう実務は次に記載されている業務のことを指します。
- 1.空気調和設備管理
- 2.給水、給湯設備管理 (貯水槽の維持管理を含む。浄水場の維持管理業務を除く。)
- 3.排水設備管理 (浄化槽の維持管理を含む。下水処理場の維持管理業務を除く。)
- 4.ボイラ設備管理
- 5.電気設備管理 (電気事業の変電、配電等のみの業務を除く。)
- 6.清掃及び廃棄物処理
- 7.ねずみ、昆虫等の防除
例えば下記などでの業務は、受験資格に該当する用途とみなされないため、注意が必要です。
例)受験資格に該当しない用途
倉庫、駐車場、工場(浄水場、下水処理場、清掃工場、製造工場等)等の用途に供されるもの。その他特殊な環境(通信施設、発電所等)にあるもの。
建築物環境衛生管理技術者の試験日程
試験は年に1回で、2023年度の日程は下記の通りです。
試験実施日:2023年10月1日(日)
建築物環境衛生管理技術者の試験科目
ビル管理士の試験は内容が多岐に渡ります。
- 1.建築物衛生行政概論
- 2.建築物の構造概論
- 3.建築物の環境衛生
- 4.空気環境の調整
- 5.給水及び排水の管理
- 6.清掃
- 7.ねずみ、昆虫等の防除
難易度も年によって異なりますが、平均して合格率は10%〜20%台と言われており難易度が高い試験と言えます。
独学でも可能ですが、通学や映像の通信講座等を利用し、効率よく学習するのがよいでしょう。
ビル管理士になる方法 その2. 建築物環境衛生管理技術者 講習会を受講する
ビル管理士の資格を取得するもう一つの方法として、建築物環境衛生管理技術者の講習会を受講する方法があります。
これは受講資格のある人が101時間の講義科目を受講する方法になります。
試験を受験するよりも簡単そうに見えますが、試験を受けるよりもさらに厳しい受講資格を満たす必要があり、また講義時間も合計で101時間と長い上、受講するのに108,800円もかかるため、働きながら受講するのにハードルが高い方法と言えそうです。
講習会の受講資格
受講資格は大きく分けて2つあります。
ひとつは「学歴」と卒業後の実務経験年数。
もう一つは「免許」と免許取得後の実務経験年数です。
例えば、理学等の大学を卒業し、その後、建築物の維持管理に関する実務を1年以上経験した者であったり、第三種電気主任技術者の免許を取得した後、建築物の維持管理に関する実務を1年以上経験した者などです。
詳しくは試験実施機関の「日本建築衛生管理教育センター」にてご確認ください。
講習会の内容
講習会の内容は下記の7科目、計101時間になります。
- 1)建築物衛生行政概論 10時間
- 2)建築物の構造概論 8時間
- 3)建築物の環境衛生 13時間
- 4)空気環境の調整 26時間
- 5)給水及び排水の管理 20時間
- 6)清掃 16時間
- 7)ねずみ、昆虫等の防除 8時間
合計 101時間
募集人員も100名と決まっているため、申し込む場合は急ぐのがよいでしょう。
まとめ
ビル管理は専門的な知識や技術が必要な業務のため、資格を取得するとメリットが大きいです。
建築物環境衛生管理技術者をはじめ、取得するのは簡単ではありませんが、実務経験を積むのと同時に、効率よく学習しながら様々な資格にチャレンジしてキャリアアップを目指していきましょう。
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