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ふだん自宅や外出先で何気なく使用しているトイレですが、昨今の温水洗浄便座の普及や衛生陶器の進化に伴いトイレも多様化してまいりました。しかしながら建物の規模や用途によって採用できるトイレへの給水方式が異なる場合があります。代表的で主な給水方式であるフラッシュバルブ式とタンク式の仕組みや違い、さらに最近流行のタンクレストイレのメリット・デメリットについて解説します。
フラッシュバルブ式
フラッシュバルブ式の特徴
フラッシュバルブ式のトイレは、学校や駅などの不特定多数の人が連続して使用しがちな公共の施設で多く使用されています。フラッシュバルブは水道管に直接取り付けられており、レバーペダルや人感センサーなどで起動させることにより、強力な水流で便器を洗浄します。タンク式のように水を貯めておく必要がなく、時間をおかずに連続して使用することができるのが特徴です。
またタンクを設置するスペースを確保する必要がないため、省スペースが可能な点もメリットとして挙げられるでしょう。
ただし、どこにでもフラッシュバルブ式のトイレを設置できるわけではありません。一般的にフラッシュバルブは25A以上の太さの給水管が必要で、一定以上の水圧が確保できないと設置できないケースがほとんどです。
フラッシュバルブ式の仕組み
フラッシュバルブには、内部に水圧によって上下するピストンバルブがあります。レバーペダルを押すと、ピストンバルブ上部にたまっていた水がまずトイレに流れます。圧力がなくなったピストンバルブが上に押し上げられることで、水道管から水が流れて洗浄が始まります。
水道管から水が流れている間、ストレーナーと呼ばれる小さな穴からピストンバルブ上部へと水がたまります。水がたまることでピストンバルブへと圧力がかかり、下へ押し下げられると水道管からの給水が自動で止まるのがフラッシュバルブ式の主な仕組みです。
タンク式
タンク式の特徴
タンク式はその名の通りタンクに水をためておき、それを流すことで洗浄する方式です。タンク式のうち、天井の高い位置に取り付けたタンクから紐をひっぱって水を流すタイプのハイタンク式は、現在はほとんど見かけません。便器のすぐ上にタンクがあるタイプのロータンク式が一般的になっています。
フラッシュバルブ式と異なり、タンク内に十分に水をためてからでないと流せないので、連続使用できない点がデメリットの一方、水圧が弱いところでも問題なく使用できるのが特徴です。又、ロータンク上部に貯める水で手洗いを設置できるので、手洗いのスペースが必要なく、ほとんどの賃貸住宅ではこのロータンク式が採用されています。
ロータンク式の仕組み
ロータンク式の仕組みを説明します。まずハンドルレバーを回すと、レバーと鎖でつながったフロートバルブ(フロート弁/ゴムフロート)と呼ばれる部品がタンクの底から引きあげられます。排水口をふさいでいたフロートバルブが引き上げられることで、タンクにたまっていた水が流れて洗浄されたのち、再びフロートバルブが排水口をふさいで排水が止まります。
タンク内の水が流れ出ることによって水位が低くなると、浮き玉も下がって行きます。浮き玉にはタンクと給水管をつなぐボールタップという部品がついていて、浮き玉が下がるとボールタップの給水弁が開くことでタンク内に水がたまります。浮き玉が水位と共に上がってくると、ボールタップの給水弁が閉じて給水が止まります。タンク内には、なんらかの部品の故障で給水が止まらなくなった場合に備えて、オーバーフロー管という上から排水して水が溢れるのを防ぐ部品もあります。
タンクレストイレ
タンクレストイレのメリット
近年人気があるタンクレストイレですが、リフォーム時にはおよそ4台に1台が導入されており、急激に普及が進んできているようです。
タンクレストイレは水道から直接給水する仕組みなので連続して水を流すことができ、その名の通り水をためるタンクを必要としません。タンクがないことで、トイレ内の空間をすっきり見せられるスタイリッシュなデザイン性の高さが魅力です。
またトイレ本体部分が一体化したフォルムであるため、これまで汚れがたまりやすかった便器・便座・貯水槽といった部材の継ぎ目が掃除のしやすいことも人気の理由としてあげられます。
タンクレストイレのデメリット
一般的にタンクレストイレはロータンク式のように手洗いがついていないので、トイレが個室タイプの場合は手洗い器が別途必要になります。省スペースだけを目的とする場合には設置は向かないでしょう。
タンクレストイレは、水道から直接給水することで洗浄する仕組みのため、一定程度の水圧がないと設置できないケースがあります。機種によって異なりますが、最低水圧(流動時)0.05〜0.07MPa以上・最高水圧(静止時)0.75MPaといった水圧条件(手洗い器を設置するとさらに強めの水圧が必要になる場合も)がありますので、設置前に確認が必要です。とはいえ、従来では設置が困難だったマンションの高層階のような水圧が弱い場合でも、水圧調整できるブースターがついた機種であれば対応できることもあります。
またタンクレストイレは電気制御により給水バルブの開閉を行っている点も注意が必要です。災害などの停電時には洗浄が作動せず手動での対応が必要になりますので、あらかじめ操作方法を確認しておいたほうが良いでしょう。
故障時に通常のトイレより費用がかさみがちなのもデメリットと言えます。タンクレストイレは便器と便座が一体となっている構造上、故障時に一部の交換・修理が難しいケースがあります。また電気機器が多く使われていることからも、本体が破損していなくても部品の経年劣化に伴う寿命は、およそ10〜20年と考えられるでしょう。
まとめ
多くの人が1日のうちに何度も使うトイレですが、仕組みや特徴によりタイプが異なることがお分かりいただけたでしょうか。給水方式だけでなく各メーカーの技術進歩によって、ナノテクノロジーで表面を加工したり便器のふちを無くしたりといった汚れを付きづらくした機能や、少ない水でもうずの起きやすい便器の形など節水や洗浄方法なども工夫が施されており、デザインや機能性、ランニングコストなど様々な点で選択の幅が広がっています。
例えば、古い規格の配管位置でも交換できるリニューアル専用の物や、デザイン優先なら一見するとタンクレストイレのようなスッキリしたデザインのタンク一体型ローシルエットのもの、タンクが背面に隠されているキャビネット型なども人気があるようです。
特に賃貸マンションなどの収益物件では、省スペースや故障時などのコストや修理のしやすさ、入居者に選ばれるデザインといった多角的な視点からバランスをとった選択が必要となってくるでしょう。