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雨漏りというと、毎年のように起きる豪雨や台風の被害を思い浮かべることが多いでしょう。しかし実際には日常的に起こりうるトラブルのうちの一つです。ビルやマンションなどの鉄筋コンクリート造の建物の雨漏りや漏水について、原因や調査方法をご紹介します。
雨漏りの原因
屋上・ベランダ
一般的な戸建てと異なる点として、ビルやマンションの屋根の形状があげられます。ビルなどでは、戸建てでよくある傾斜のついた屋根ではなく、陸屋根という平らな屋根を採用した構造が圧倒的です。屋上やベランダは水捌け用に微々たる傾斜はついていますが、ほぼ平坦で、水が溜まりやすいトラブルが多く雨漏りの発生の確率が高くなります。
屋上は建物の構造上、常に風雨や日中の紫外線の影響を受け、その分劣化しやすい部分と言えます。屋上の防水層が劣化した状態のときに排水口にゴミや落ち葉などが詰まると、排水しにくくなって溜まった水が高い確率で雨漏りの原因となります。防水層は一般的に施工から10年の保証が付くことが多いですが、材料と施工で保証が分かれていたり3年ごとに表層を塗り替える必要があったりと条件が複雑で、どちらにしろ定期的なメンテナンスが必要な部分です。
外壁
外壁もまた風雨や紫外線の影響を受けやすい部分です。陸屋根のビルやマンションは、一般的な戸建てのように軒がないので雨が外壁に直接降りかかります。
また、コンクリートは経年劣化とともに縮み脆くなり地震などの振動によってもクラックと呼ばれるひび割れが起きやすくなります。建物の表面に使われているタイルなどだけでなく、内側のコンクリートにもひび割れが起きることで屋内への雨漏りとなってしまうケースが多く見られます。
ビルの外壁のシーリング(コーキング)材の劣化も同様に原因になります。鉄筋コンクリート造は想定外のクラックを防ぐため、伸縮目地といわれる箇所があり、あらかじめその目地をシーリング材で防水しています。そこから雨水が侵入すると鉄筋を錆びさせてしまいます。シーリング材は、建物全体の防水性能を高める重要な役割を担っています。このシーリング材が劣化してしまうと、雨漏りの原因だけでなく建物全体の耐久性が損なわれてしまいかねません。
窓のサッシ等の建具
どんな建物でもどこかしらに窓がありますが、窓のサッシの歪みやシーリングの劣化も雨漏りの原因になります。新築にもかかわらず窓のサッシが原因の雨漏りがする場合は、サッシ自体の水切りやパッキン不良などの施工不良の場合も考えられます。必ずしも経年劣化によるものだけでなく、様々な要因が雨漏りを起こしている可能性があります。
建物内部の水漏れ
雨漏りと異なり、建物内部の配管や水まわり設備からの水漏れもあります。
建物内部の水漏れは各フロアの天井や壁の中を通る配管が破損したり、つなぎ目に隙間ができるなどして起こります。
配管には水道用の給水管や給湯管、汚水や生活排水用の排水管、エアコンのドレン管などの多くの種類があり、適材適所に様々な材質が使われます。給水や給湯は水圧が掛かっているいるので吹き出しやすく水道元栓や止水栓を締めるまで止まりませんし、汚水などの排水管が原因の場合は臭いや汚れなどで内装の被害がさらに大きくなってしまいます。
洗面台の蛇口が壊れたり、トイレが詰まって汚水が溢れたりといった上の階の水まわり設備が原因の場合も、住人が留守だったり夜間のオフィスで起きると対応を行うまでに時間がかかることもあり注意が必要です。
原因の特定方法
目視
まずは外部から目視で基本的な調査を行います。室内の漏水状態を確認し、外部のひび割れやシーリングの脱落や破損を見つけるといった内容です。原因に対しておおよその見当をつけるための検査と思って良いでしょう。
散水調査
目視により見当をつけた箇所へ外部からシャワーホースや高圧洗浄機などで実際に散水し、室内に漏水が起こるか確認する方法です。雨が降っている状態を再現することで、実際にその箇所から漏水しているかを特定します。
色水を流す紫外線投射発光検査
雨漏りの原因である可能性が高い箇所に、レインボービュー検査液という色水を散水する調査方法です。紫外線照射(ブラックライト)によって発光する7色の検査液を使いわけることで、複数ある各侵入経路と漏水箇所の因果関係がわかるようになります。雨漏りが複数箇所ある場合に効果的で、散水調査をより精度を高めたものと言えるでしょう。使用した色水は数日で発光しなくなるものがほとんどですが、検査を行う前に部材が変色しないかどうかチェックしておいた方が安全です。
電気抵抗試験
通常、乾いたコンクリートはほとんど電気を通さない性質を持っていますが、ひび割れなどによって水を含むと電気を通す物質(エフロレッセンス)が発生します。この物質が通電することにより、電気抵抗値の変化を確認することで雨漏りの箇所を特定することができます。
赤外線サーモグラフィー検査
高感度赤外線カメラを使用し、水を含み温度が低下している箇所を特定する検査です。建物撮影時の天候や日射量、時間帯など環境の影響を受けやすいため、診断に適した条件下で行う必要があります。また、周囲が他の建物に囲まれていたり、建物に反射材が使用されているなど、正確な検査が難しい場合もあります。建物に負荷をかけないのがメリットですが、高感度赤外線カメラという特殊な機材を必要とするため、調査費用の相場は高額になるケースも多いようです。
ガス調査
屋内の雨水が漏れている箇所から特殊なガスを放出し、そのガスが出てくる外部の箇所を検知する方法です。散水や色水は外部から水を流しますが、ガス調査の場合は逆方向から侵水箇所を特定します。ただし特定できたルートが必ずしも雨漏りが起きている浸水ルートかどうかは断言できないケースもあるので注意が必要です。また、機材を多く使用するため比較的費用が高額になる調査方法です。
まとめ
複数ある雨漏りの原因を突き止めるのは難しい
これまで見てきたように、雨漏りや水漏れには様々な原因がありますが、実際に雨水の侵入経路を特定するのは難しいのが現状です。屋内に漏れ出てきたのが1箇所でも、原因となるひび割れが複数ある場合もあります。ビルやマンションなど規模が大きくなればなるほど、原因となる小さなひび割れを確実に見つけ出すことが難しくなっていきます。
そして雨漏りの修理で多いトラブルとして、一度補修しても再発してしまうというケースがあります。必ずしも補修が不完全だったというわけではなく、原因が複数あるのにそれらを特定しきれなかった際に起きてしまいます。
計画的な修繕計画と日頃のビルメンテナンスで雨漏りに備える
ただし定期的なメンテナンスをきちんと行い、異状が軽微な状態ですみやかに対処しておけば重大な事態に至らないで済むケースもあります。例えば建物の「長期修繕計画」をあらかじめ作成し、防水層のトップコート塗布を定期的に行うことも効果的です。そして管理会社が行うビルメンテナンス業務における日常の点検で、いち早く劣化の兆候や破損などの異状を発見することが重要と言えるでしょう。
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