現役ビル管理士に聞くと、管理会社に寄せられるトラブルで季節の変わり目によくあるのがエアコンのトラブル。「冷えない」「動かない」「うるさい」といった機械の不良から「水漏れ」「臭い」といったものまで様々な現象があり、それぞれに要因が考えられますが現場の苦労を聞いてみました。
テナントからエアコンのトラブルについて連絡があった場合、ケースバイケースではありますが、管理会社のスタッフが現状を確認に行くことが多いと思います。最近のエアコンはマイコン制御なのでメーカーが出しているエラーコード表と状況で粗方原因が特定出来て専門業者を手配することになりますが、制御が高度になった分、周辺ノイズによる制御信号のトラブルも多くリセットをするだけで解決する場合もあります。
故障により営業できない・業務を止めるといった事態になれば売上が減ったり損失が出る訳で当然ながら早急な復旧が求められます。
又、修理や損失の補填に費用が発生するので、そのエアコンがテナントの所有か?ビルオーナーの所有か?使用中の責任はだれにあるのか?を早急に確認しなければなりません。対応に不備があればクレームだけにとどまらず、賃下げ要求や退去にもつながりかねません。
そもそも「臭い」に関し対応が難しい理由は、人によって感じ方が違います。季節の変わり目に冷房暖房が切替わり、エアコンの使い始めに臭いは出やすいですが、人によって許容度にかなり差があり、実際にその場に複数人で行ってみないと程度の程はわかりません。
暖房の使い始めは焦げくさい臭いが発生することがありますが一時なことが多いですし、加湿機能のある場合は生乾きのようなにおいがするときもあります。又、夏場はおいては、エアコンは原理的に冷房時に空気中の水分を集めてしまうので、集めた水を排水する機能があり、最終的に下水につながっているためどぶのような下水臭がするときもあります。
集めた水に水垢やカビが発生しカビ臭がしたり、ひどいときは健康被害にも繋がりかねません。経験上、発生の時期や「臭い」の種類で原因にあたりをつけて対応に臨みますが、「臭い」といっても様々なものがあります。
2015年に施行された「フロン排出抑制法」により、業務用エアコンは法定点検が義務化されています。これは使用時の経年劣化などによる設備不良等で、フロンガスが漏えいすることを規制するためのものです。エアコンや冷凍・冷蔵庫など、該当する設備の管理者に対して責任を定義づけています。
商業ビルの業務用エアコンの場合、テナント利用者ではなくビルのオーナーが管理者となる場合が多いです。
圧縮機の定格出力によって点検頻度が異なりますので、管理会社がエアコンの法定点検を請け負っている場合は、規定に従い有資格者による点検を行います。
いざエアコンが故障すると、修理するのか取り替えるのかという問題が持ち上がります。エアコンの耐用年数を見てみると、
・出力が22kw以上のビルトイン・ダクトエアコン→15年
・出力が22kw以下のビルトイン・ダクトエアコン→13年
・ダクトを使わない簡単に取り付けられるエアコン→6年
となっています。もちろん、耐用年数が過ぎたから寿命というわけではありません。定期的にクリーニングするなど細かなメンテナンスをしながら15年〜20年と長期に使用している場合もありますし、逆に急速モードを頻繁につけたり消したり、厳しい環境で24時間運転など使用時間が長いなど、使い方によってもだいぶ差が出てきます。
こまめにメンテナンスしていても、使用していればどうしても経年劣化は避けられません。故障の原因がはっきりして、いざ部品の交換というときにすでに入手困難ということがあります。通常業務用エアコンの部品は、製造終了後9〜10年間の部品保有期間が設けられています。それを過ぎてしまうと、部品が手に入らなくて修理できなくなってしまうケースが発生します。
修理の内容によってかかる費用は大きく変わってきますが、やはり買い替えする方が費用は高くなる場合が多いです。もちろんオーナーさんにとっては安く済むに越したことはないので、修理で直るのであれば使い続けたいのが心情でしょう。
ただ管理している側からすると、重大な故障に発展する前に計画的に交換して欲しいのが本音です。オーナーさんに納得してもらうためにも、日頃のメンテナンス状況や、故障トラブルの内容をきちんと説明できるかが大切ですね。