新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言に伴う外出自粛や営業自粛の影響は、観光産業に大きな影響をもたらしています。 旅行が好きな人はもちろん、観光産業に関する業界の旅行会社やホテル、旅館、航空会社、クルーズ会社、観光地などにも影響を与えています。コロナウイルス感染症を避けるために3密(密閉、密集、密接)を避けたり、ソーシャルディスタンスを保つようにすることで、ホテル業界のアフターコロナにおける変化が注目を集めています。
国連世界観光機関によると、 新型コロナウイルスの影響で世界中で実施されている渡航制限により、国際観光客の到達数は前年と比べると20%〜30%減少することが予測されました。国際観光収入(輸出)は約3000億〜4500億ドルを試算しています。これは2019年に得た1.5兆ドルのほぼ3分の1に相当します。観光庁によると、今年1-3月期の国内旅行消費額は3兆3,473億円で前年同期比20.5%減少しました。
日本政府観光局(JNTO)の最新データによると、今年4月の訪日外国人旅行者数は2,900人で、前年同月比は 99.9%減となり、7ヶ月連続で前年同月を下回りました。前回訪日旅行者数を減少した新型インフルエンザの影響期間の最大減少率の37.7%と比較すると、影響がかなり大きいです。JNTOの金子正志理事は「過去の感染症などの事例と違うのは、全世界が一斉にこれまでにない規模で越境の移動を規制し始めたこと。日本だけで対処できる状況ではなく、全世界的に制約が解除されないと元に戻らない。」と説明しました。
コロナショックで、ホテル業界は深刻な打撃を受けています。世界中の多くの国における海外渡航制限の実施や、日本政府の緊急事態宣言の発令の影響で、22海外市場全てで訪日外客数がほぼゼロに近い数字となり、国内外の旅行者が激減しました。また、オンラインによる宿泊予約サイト運営会社(OTA) も5月〜7月の前年同日比20%以下で推移しており、新規の予約も入っておらず前年より約9割近く少ない状況です。
日本宿泊施設の稼働率は80%以上も減少しました。緊急事態宣言が5月7日以降も延長されたことやインバウンドの停止が超長期化することで、6月末日までの休業を表明した宿泊施設が多くなりました。現在コロナ関連倒産したホテルは約26件、さらに拡大すると見込まれています。
先日、日本の42県緊急事態宣言が解除され、残り1都1道3県においても感染拡大のペースが鈍化していることから5月末解除へ向けた検討が進められています。もうすぐ全国の緊急事態宣言が解除されることに対して、旅行情報を配信するオンラインメディアのトラベルズー・ジャパン株式会社は緊急事態宣言解除後の旅行意向に関する調査をし、先日結果を発表しました。トラベルズー®(NASDAQ:TZOO)は世界3,000万人以上、日本で約100万人の登録メンバー向けに旅行情報を配信しています。今回の調査はインターネットで日本国内のトラベルズーメンバーにリサーチした上で、 4,000名以上の回答から分析しました。
調査結果によると、緊急事態宣言解除後の旅行再開意向は国内旅行3ヶ月以内に(65.2%)、海外旅行は6ヶ月以内に(47%)という意見が多かったです。また、旅に対する価値観の変化として、マスクや消毒など衛生意識の向上や「3密」(密閉、密集、密接)を避ける意向(75.2%)、衛生対策がホテルや航空会社の新たな選択基準になる(46.6%)という声がありました。これらは、アフターコロナ「旅行時のニューノーマル(新常態)」 となります。
新たな旅の価値観に対して、コロナ収束後でも3密やソーシャルディスタンスを意識をしつつ、安心・安全・清潔という宿泊施設が持つ基本的な使命と公共性を改めて認識させられます。ビフォーコロナに、宿泊の決め手になっていたのは「価格・立地・ブランド」でしたが、これから「安全・清潔・コンセプト」の3つが宿泊先を決める軸と予想されています。また、ホテルの運営は無人化になる傾向が加速しています。
ホテル運営は2018年6月に改正旅館業法の施行に伴うフロントをなくした無人運営が可能となり、サービス産業におけるIT技術の発展と共に、 ホテル運営の「無人化」という新たな潮流を生み出しました。
観光立国策、東京オリンピックや大阪万博といったホテル需要が増加し、改正旅館業法施行による中小規模ホテル展開も増え、人材不足やコスト削減のため、宿泊場所にフロントがなく、常駐スタッフもいない「無人ホテル」がじわりと増えています。
「無人ホテル」には常駐スタッフがなく、宿泊者のチェックインや本人確認するためのタブレット端末と少しの案内を入り口やロビーに設置するのみで、ホテルの管理はホテルから離れた場所に運営本部として運用されています。物理的な鍵を不要とする客室スマートキー(暗証番号)の安全な受け渡し、宿泊者名簿や清掃業務もシステム上で一元管理できます。人件費などコストを抑え、低コストと高収益のホテル運営が実現できます。例えば、今年オープンした東京にある「COCO SHUKU浅草蔵前」ホテルは「無人ホテル」の一例です。
また最近、米コロンビア大学放射線研究センターの研究チームは、「遠紫外線」の研究に取り組み、細菌やウイルスを効果的に消毒することを検証しました。将来的に「遠紫外線」は安全かつ低コストの手段として、新型ウイルスの感染予防にも活用できると期待されています。
現在、新型コロナウイルスの影響で新たな旅の価値観や、3密やソーシャルディスタンスへの意識が高まっており、旅行者は「安心・安全・清潔」であるホテルを求めています。また、新型コロナウィルスの収益対策に悩む宿泊事業者にも「遠紫外線」の活用と無人ホテルは一つの解決策になるのかもしれません。
参考サイト:
国連世界観光機関/OTAのデータについて
https://www.yamatogokoro.jp/inboundnews/pickup/37753/
観光庁の最新データについて
https://www.mlit.go.jp/common/001344281.pdf
日本政府観光局(JNTO)のデータについて
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/200520_monthly.pdf
トラベルズーのリサーチについて
https://www.travelzoo.com/jp/blog/after_covid19_survey/?ec=0&dlinkId=2874707