新型コロナウィルスにより緊急事態宣言が発令され、初めてテレワークを導入した企業も多いのではないでしょうか。
以前から「働き方改革」は叫ばれていましたが、新型コロナウィルスを想定した「新しい生活様式」を踏まえ、今ますます多様な働き方が見直されてきています。
「SOHO」による働き方もその一つ。
今回は「SOHO」について、改めてご紹介してまいります。
SOHOとは「Small Office Home Office」の略であり、小規模スペースの小さなオフィスや住まいで働くこと、もしくはそのための物件を意味します。
「家で働く」というと「在宅勤務」とはどう違うのかと思われるかと思いますが「在宅勤務」はあくまで会社に所属しており、事業主と雇用契約がある状態を指します。
一方でSOHOは、企業などから業務委託を受けたフリーランスや自営業による勤務体系である点が異なります。
それではSOHOと事務所の違いはなんでしょうか。
明確な違いに「契約」がありますが、SOHOにはいくつかのパターンがあります。
SOHOは住居契約を前提に認められている「住居物件」と、通常の事務所契約ができる「元が住居だった物件」、それと面積が小さいけれどそもそも最初から「事務所」の3種類があります。
事務所契約ができるSOHO物件というのは、用途違反でも認めてしまっている住居物件か、事務所として法令上クリアしているかのいずれかです。
一般的に言われている両者の違いをまとめると下記になりますが、住居契約のSOHOには「場合が多い」という箇所を法律違反と誤解されている方が多いので注意が必要です。「場合が多い」という箇所は、実は、それだけで法令違反に該当する訳ではないのです。
本当の法令違反はどんなことか、どのような使い方なら住居としてのSOHO物件を借りることができるのか、を知ったうえで、自分の働き方、ライフスタイルにマッチした物件探しをすることが大切です。
<住居契約のSOHO>
<事務所契約のSOHO>
住居契約のSOHOは特に「非課税」である点は初期費用を抑えられるため、事業を開業したばかりのスタートアップ企業にとっては大きなメリットと言えますが、だからと言って、住居として使用せずに大家さんに嘘をついて借りるのはダメですね。
<ここが誤解されているポイント>
では、「住居契約のSOHO」が用途違反になるかどうかの境目は何でしょうか?
これは、「住居としての用に供されているかどうか?」という実態判断であるとされています。
つまり、寝泊まりして住宅として生活している実態があるかどうかなのです。
従って、法令上、「住宅」という物件を開発する際には、必然的に生活するために、オフィスには無くてもよい住宅設備=キッチンやバスルーム等が備わっ
ているかどうか、といった条件があります。
こうして住宅として用途申請されて建築された物件を住宅用途以外で使用することは、単純に言えば「建築基準法」の法令違反になります。
これには、市や県の建築局による「建築パトロール」によって定期的に取り締まりが行われており、悪質な違反には「是正指導」が行われますが、これは法的な強制力のない「公開措置命令」の行政処分です。
一方、「不特定多数の出入りがある」という業態の場合、同じマンションの住民からのクレームといったトラブルがあるから、という大家さんの都合だけではなく、「不特定多数の人の出入りがない前提の住居」としての「消防法の基準」で建築されているため、これは「消防法違反」に該当する懸念があります。「消防法違反」には明確な罰則規定もあります。
では、こうした「住居契約のSOHO」が用途違反になるかどうかの線引きはどこにあるでしょうか?
実態判断ということになると、「個人事務所として仕事もしているが、ベッドがあって寝泊まりして生活している」ということなら「合法」なのです。
そこに、法人登記を置いたかどうか、郵便受けや表札に法人名を表記したかどうか、は法律違反になるかどうかの要件ではないのです。
但し、社長が寝泊まりしているから用途違反ではない、としても不特定多数の人を出入りさせていると「消防法違反」になる、ということです。
入居審査時には人の出入りはなかったけれど、そのうちにいろんな人が出入りするようになった、となると、本当の事務所に引っ越す必要があります。
なお、税法においても、住宅は家賃に消費税がかからないだけでなく、大家さんには課税標準の特例措置で「固定資産税」が安くなっている、という面もありますので、「不特定多数の出入りはない」けれど、住居として使っていない実質的に事務所、というSOHOですと税法的にも問題が発生します。
このように、SOHO用途での住居というのは法令上のデリケートな判断を要する使い方であると言えますが、一方で、取引先やお客様との面談はオンラインで済ませられる時代になりましたので、SOHOワーカーがSOHO相談可の住居を借りやすくなった時代でもあります。
それではどんな職業や業種がSOHOに向いているのでしょうか。
財団法人日本SOHO協会によるとSOHOは、「ITもしくはICT(information and communication technology「情報通信技術」)を活用して事業活動を行っている従業員10名以下程度の規模の事業者」とされていますが、実は明確な定義はありません。
しかしながら、インターネットの普及がSOHOを大きく支えていることは間違いなく、パソコンやコピー機などの必要なOA機器があれば、場所を選ばず仕事ができる職種が向いていると言えます。
例えば下記になります。
事務所に比べて、スタートアップしやすいのがSOHOであるため個人で始める人やベンチャーといった形態は向いていると言えるでしょう。
しかしながら、上記のようにデメリットもあります。メリットやデメリットをしっかり把握した上で、始めるのがよいでしょう。
それではどんな部屋がSOHOに適しているのでしょうか。
ポイントとなるのは「立地」「周辺環境」と「間取り」です。
いくら自分の好きな場所で働けるとはいえ、仕事によっては業務委託元の企業に打ち合わせに行ったり、自分のクライアントがSOHOのオフィスを訪れることもあるでしょう。
そんな時、あまりに東京から離れた地方に物件があるよりは、やはり都心へのアクセスがしやすい交通利便性が重要であると言えます。
周辺環境も大切なポイントです。
また、生活と仕事の拠点が同じなので、交通利便性だけでなく、生活利便性も重要ですし、さらに、息抜きで散策や遊びに出かけて気分をリフレッシュできるようなエリアであることもクリエイティブな仕事には大切なことです。
忘れがちですがSOHOの場合、プライベートな空間である居住エリアと仕事場が分かれているレイアウトであることが理想的です。
必要最小限での仕事のスタッフや来客などがあった時、生活エリアを通らずに仕事場やトイレに行ける間取りになっていることも必要です。
また、自分の仕事の時間と生活の時間をきちんと分けてリズムを変えるためにも、こうした分離された間取りの方が落ち着く人も多いでしょう。
現在検討している賃貸物件が自分の働き方のスタイルに合った物件になっているか、間取りをチェックしてみましょう。
そして、これからのSOHOに必須の仕事環境、それが「高速インターネット回線」です。
不特定多数の人の出入りがある業態なのに「住居契約のSOHO」を借りると「消防法違反」になってしまいますが、オンライン面談できれば、人の出入りを最小限にできます。
オンライン面談の途中で「画面がフリーズ」するようなネット環境では、仕事もはかどりませんし、大事な商談も逃してしまうかもしれません。
高速な光通信で、その部屋専用の回線を引いてある、あるいは引くことができる物件を探すことが大切です。