ビル管理のことを調べていくと、いろいろと聞き慣れない言葉にぶつかります。
通称「FCU」とも呼ばれる「ファンコイルユニット」もその一つ。 空調システムのようですが、エアコンとの違いや、どのように使われているのかがわかりません。本日は現役ビル管理士の網代部長にお話を伺いました。
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C+ONE編集部:「ファン」とは「送風機」、「コイル」とは「らせん状に巻いたもの」のことを言いますよね。 「ファンコイルユニット」は「送風機とコイルが一緒になっており、室内から空気を吸い込み、エアーフィルタで塵等を取り除き、コイル状の熱交換器で温度、湿度を調整し、送風機で室内に戻す装置」となっておりましたが、どういう仕組みかいまいちわかりません。
網代部長:ざっくり説明すると、ファンコイルユニットは温度や湿度の調整に水を利用します。
ファンコイルユニットでは、建物に血管のように配管を通して水を流しているのです。
大体屋上や地下などにメインユニットと呼ばれる心臓のような部分があって、そこから水をどんどんポンプで循環させています。
ファンコイルユニット自体は、空調させたい部屋に設置し、そこに配管から枝のように水を流します。
夏の場合を想定すると、メインユニットから冷たい水が流れて、各ファンコイルユニットに通ります。冷たい水で冷やされた空気が室内に吹き、室内からは暖まった空気を吸い込んでコイルにぶつかります。
そのため、水の流れとしては、帰りはあたたまった水をメインユニットに戻しているんですね。
冷たい水がいき、あったまった温水が戻ってくる、そしてメインユニットでまた水を冷やして流している、とこういう仕組みになっています。
網代部長:標準的なエアコンの場合は冷媒管が単独でついています。
単独でここに冷媒ガスが入ってきていて同じように室内の空気を冷やしています。
エアコンと冷媒管、1対1じゃないものも、もちろんたくさんありますが、基本的には1対1。そのためエアコンがもう一台ありますという場合は、もう一台室外機が並ぶイメージをもってもらうと分かりやすいでしょう。
そうするとどういうことが出来るかというと、この部屋は冷房して、この部屋は暖房をするということができます。
逆にファンコイルユニットの場合は、中央制御になるので、冷たい水をずっと循環させている場合はどの部屋も冷たい、ということになります。
網代部長:ファンコイルユニットは循環をしているので、ずっと電気をいれっぱなしではあるけれど、循環だけを考えると、最初に動かしてから同じような圧力で流しているというのは、実はあまり電気の消費がないのです。
低速走行している車を考えてもらうと分かりやすい。
大きくアクセルふかしてスタート、止まって、またアクセルふかしてスタート、と繰り返すよりも、ずーっと低速走行をしている方が電気の消費量が少ない。
ファンコイルユニットの場合はある程度の消費量でずーっと回っており、個別の調整をする場合は、あてる風を強くしたり弱くしたり、入ってくる水の量を調整したりする程度なので、ある程度決まったエネルギー消費内で運転しているという設計概念のシステムのため、省エネと言われているんですね。
それに対しエアコンは、階によってつけたり、つけなかったり柔軟にできますがその分エネルギーは使います。
網代部長:規模というよりは、用途に合うかが大事。
冷房なら冷房、暖房なら暖房と使う目的が建物内で統一されていて、部屋が個別になっているようなビルに用途として合いやすい。ホテルとか学校、病院、大型商業施設などがこれにあたりますね。
たとえばホテルでいうと、大体どこにいっても室温が同じ。
廊下にいようが、部屋にいようが、ロビーにいようが。
建物としてちゃんと快適空間にする必要があるので集中制御が大事になってくる。
個別のニーズというよりは空間自体を、制御された空間にしてしまいたいというニーズがある。
逆に、住宅にしろ事務所にしろ、飲食店舗ビルにしろ、個別に業態が違っている場合などは、ファンコイルユニットはあまりマッチしない装置なのです。
C+ONE編集部:ファンコイルユニットを調べてみると天井に露出されている「天井カセット型」や天井に埋め込まれている「天井埋込型」、「天井吊り型」「床置き型」など様々なタイプの製品があるようです。
こういった形態の種類はエアコンにもあるものなのですか?
網代部長:エアコンにももちろんあります。
ただエアコンというのは熱の交換をするのに結構大きな設備が必要となってしまう。
それに対してファンコイルは小型化することも可能なんです。
ファンコイルの場合は直接コイルにつまりスプリングみたいな管に熱が入ったりして、そこにファン(送風機)をかけるだけなので、小さいサイズでも出来る。
原理はそんなに変わらないけれど、エアコンの場合は、効率よく熱の交換をするために
コイルではなく、羽状になっている。
たくさん空気に触れて熱の交換をするために、羽がたくさん並んでいるイメージですね。
この小さいというメリットを活かしてどういう使われ方がするかというと、窓際とかに設置することが多いですね。
網代部長:外に面している壁や窓際は「ペリメータゾーン」と呼ばれているのですが、特に外気の影響を受けやすい場所なのです。
冬は寒くなるし、夏は暑い。
ちなみに室内と室外の温度差が小さいエリアを「インテリアゾーン」と呼びます。
建物というのは外周がほとんど窓際だから、そこに行きと帰りの配管をしておけば、小さいファンコイルを床置きで取り付けやすい。
エアコンでも同じように窓際を温めることができるけれど、エアコンの場合は、本体はインテリアゾーンにあって、そこから枝分かれした空気が窓際に吹くような仕組みになりがち。
ファンコイルユニットだと、そのものが窓際に置きやすい。
この窓際に置きやすいというメリットを活かして、最近ではエアコンと組み合わせて使われることも多いですね。
C+ONE編集部:ファンコイルユニットの仕組みや活かし方を理解することができました。 ビル内の環境を快適に保つために、用途や規模に応じた空調システムを理解し、利用することが大切なんですね。 本日はありがとうございました。
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